第121話

 岸へ戻ると、漁師達(ガタイの良い日焼けした角刈りのエルフのおっちゃん)がドッと寄って来て、口々に礼を言う。

 泣きながら、バシバシ肩や背中を叩いて喜びを示す、暑苦しいエルフのおっちゃん達。


「坊主! 本当にありがとな!! ホトホト手を焼いててなぁ・・・最近、被害が多くて困ってたんだよ。」


 ≪ピロリン♪ 新しい称号:サクラの救世主 を取得しました。≫


「お礼と言っちゃなんだが、これ持ってけ!」

と台車でデッカイマグロを運んで来た。


「うぉーーーー!!! でっけーー!7m級の黒マグロ?」

と驚く海渡。


「おう! 貰ってくれ!!」

とおっちゃん達。


「凄く嬉しいんだけど、これ滅茶滅茶高いんじゃないの?」

と海渡。


「なーに、ここら辺のマグロはこのサイズよwww 心配するな!」

とおっちゃん。


「じゃあ、お願いあるんですが・・・」

と海渡。


 せっかくだから、プロに解体してもらいたい。

 マグロって解体難しいらしいじゃん? とお願いしてみると。


「おう!判ったぜ!!」

と親指を立てるイケメンなおっちゃん。


 フェリンシアと合流し、砂浜で、焼いた海鮮物や解体してもらったマグロの刺身を堪能し、マグロの他に沢山のおまけも貰った。


 そう、『おまけ』でビックリしたのが、この世界のウニ!!!


 その大きさたるや・・・、元の世界でこれを見たら、絶叫する事は間違いない。だって、実の入ってる部分が直径50cmぐらいあるんだよ?


 そんなのがやって来たら怖いよねw


 昔両親に夏休みの家族旅行で、北海道の礼文島に渡って、食べたウニ丼、あれは未だに記憶の残ってる程の絶品だったけど、異世界のウニ丼は、あれを軽く超えてきた。

 濃厚なコクと絶妙な甘味、堪らない磯の香、もう最高でした。

 何故か、あまりサクラではウニは食べる人が少ないらしい。

 不思議だな、こんなに美味しいのにね。

 ともあれ、このお化けウニも何個か頂いて、撤収。


 最後に

「おう、坊主達、また来いよな!! いつでも歓迎するぜ!!」

と送り出された。


 ギルドに寄って、ガチコンブ79体、ギガ・ガチコンブ1体の討伐証明を貰う。

 70mのギガ・ガチコンブを出せる場所を探すのは大変でした・・・。


 午後2時にはサクラの町を出て、ゲートで王都の南門へ到着。

 豚骨ラーメン屋のおっちゃんの屋台で、軽く食べた後、ギルド本部へと向かう。


 ドアを開け、視線を感じながらも、メリンダさんを探し、手を振る。

 メリンダさんも気付き、カウンターから出て来たので、

「これお願いします。」

と討伐証明書の束を渡す。


「えーーー! 70m級のギガ・ガチコンブ」

と思わす一番上の討伐証明を見て叫ぶメリンダさん。


「・・・・・」


 それまでのガヤガヤとした会話が掻き消え、シーンと静まり返るギルド1階。



「あ・・・失礼しました。驚きのあまり・・・こちらへどうぞ」

と応接室へと通される。


「清算してきますので、少々お待ち下さい・・・」

と海渡達だけが取り残される。


 しょうがないので、海渡は紅茶を出して、フェリンシアとシュークリームを食べつつ 待つ。待つ。待つ。


「あれ? もしかして忘れられてない?」


 30分が過ぎたが、誰も何も言ってこない。


 しょうがないので、応接室から出て、メリンダさんを探すが、見当たらない。


 しかも何かみんな慌ただしい。


 他の職員を呼び止めて、30分以上待たされてるのだが、どうなってる? と聞くと・・・


「あ、お待たせしており、大変申し訳ありません。

 一度ギルド統轄マスターに合って頂けますか?」

との事。


 統轄マスター室へと通され、中に入ると

「おお、君達が噂のカイト君とフェリンシア君か。冒険者ギルト統轄マスターのヘンリオット・フォスティニアだ。」

と笑顔で迎えられた。


「初めまして。カイトです。こちらはフェリンシアです。

 えっと・・・ずっと放置だったので、どうなってるのかなぁと。」

と尋ねてみると、


「すまん、ガチコンブ120体の討伐報酬の計算・・・まあ、これはこれなんだが、今までにギガ・ガチコンブが討伐された事がなくてな・・・

 討伐出来るとも思わず、報酬金額の算定で時間が掛かっている。申し訳ない。」

と頭を下げられた。


 なるほどね、あれは結構苦労したもんね・・・。

「なるほど、理解しました。では、ガチコンブ120体だけ先に清算して頂いて、ギガ・ガチコンブの方は金額が決まり次第、カードの方に振り込んで頂くってのは如何でしょうか?」

と提案。


 店の事もあるし、あまり長居すると、ヨーコさんに怒られてしまうからね・・・。


「うむ・・・で、もう一つ問題なんじゃが、ガチコンブ1体の討伐報酬が白金貨2枚なのだよ。」


 あー これ前にもあったあれ?


「つまり、白金貨240枚となると、現金が揃わないと言う事ですかね?」

と聞くと、


「察しが良くて、助かる。実はその通りなんじゃよ。本部なのに面目ない。」と。


「まあ、じゃあ、白金貨20枚ぐらいならどうです? 残りは振り込みって事でも良いですが。」

と打診する。


「おお、そうか!そうしてくれると助かる。」

と一気にヘンリオットさんの緊張が和らいだ。


 しかし、これって、トリスターの冒険者ギルドで一気に引きだそうとすると、アルベルトさんが泣くパターンじゃないか?


「ところで、話は変わりますが、フォスティニアの姓って事は、もしかして、サンドラさんやドロスさんのご家族の方ですか?」

と気にっている事を聞いた。


「おお、サンドラやドロスを知っているのか! ワシは奴らの叔父じゃwww」と。


「そうでしたか。いやぁ~世間は狭いですねw サンドラさんには魔道具ギルドでお世話になってまして、その縁で先日ドロスさんやサチーさんとも知り合いになりました。」


「今回は、トリスターの方の私の商会がオープンしたので、お二人をご招待したんですが、送ったついでに、サクラのお魚を堪能しようかと。ガチコンブはついでに討伐しようと。」

と説明した。


 更に

「もしかして、ダスティン・サインツさんも御存じですか? 今、うちの商会を手伝って貰ってまして。」

と言うと、


「おお、ダスティンも知っておるのか。いやぁ~世間は狭いなww」

と笑っていた。


 そして、白金貨20枚が届けられ、残りはギルドカードへ振り込みとなった。

 ちあなみに、ギルドカードの残高だけで、もの凄い金額となっている・・・っぽい。見てないので、判らん。


 多分、働かなくても、一生は楽に暮らせるだろう って事は判るけど、それじゃあ、せっかくの異世界ライフが勿体ないもんね。

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