第89話
「ちなみに、何処の水を飲んだらそうなったの?」
と不思議に思って聞くと、
何でも避難民キャンプの水を飲んだら、この状態になったらしい。
食糧も行き渡ってないらしく、1日1個パンが食べられれば良い方らしい。
更に、同じ様な状態の人がかなり居るらしい。
ヨーコさんにはアルマーさんに状況と、治療しに行く事をを伝えて貰うように頼む。
避難キャンプの場所を聞き、慌ててそちらへと向かう。
水が原因と聞いて、ラピスも一緒に付いてきた。
町の中だから、少しスピードを落としつつ走り、10分で問題の避難民キャンプに到着する。
『知恵子さん、この中でサニー達と同じ状態異常の人をマーク出来る?』
『はい、みんな大なり小なり状態異常ですが、中でもサニーレベルに危険な人あ集まっているテントがあります。』
『じゃあ、そこを最優先だね。』
問題のテントに到着し、
「失礼します。治療に来ました。」
と中に入ると、中は赤ちゃん連れのお母さんや、や小さい子を持つお母さんだけのテントだった。
有無を言わさず、即座に『ヒール』を掛ける。
一瞬全員の体が優しく光り、危険状態を脱した。
一瞬何が起こったか、判らなかった母親達も、体の調子が良くなり、熱も下がったのを感じると、涙を流してお礼を言ってきた。
『ねえ、この世界って、赤ん坊にハチミツって大丈夫なの? 元の世界だと確か3歳以下はダメだったんだけど。』
『ええ、この世界では大丈夫ですね。しかもフォレスト・ビーのハチミツなら、全く問題ないですよ。』
と言う事だったので、同じようにハチミツ水を作り、手渡して行く。
みんな、ドンドン顔色が良くなり、赤ちゃんも動き出すした。
「ああ、良かった。間に合ったようです。他にも同じように、調子を崩している人が多いようなので、そちらを見てきます。」
とテントを出る。
『ねえ、知恵子さん、同じ症状の人をマップでロックして治療できるかな?』
と聞くと何回かに分ければ、今の聖魔法のレベルでも行けるんじゃないか?との回答。
やっぱり、目の前にいないと、回復系は厳しいか・・・。
そこで、風魔法で声を拡声して伝達する。
「私は、冒険者のカイトと申します。このキャンプの水が汚染されてる可能性があり、調査と治療にやってきました。今はここの水は飲まないでください。
今から治療をはじめますので、真ん中のテントまで集まって下さい。治療後の回復効果のある飲み物をお分けしますので、コップか、お皿を持って集まって下さい。
あと、食糧もお分け出来ます。」
と宣伝すると、明らかに顔色の悪い人達がぞろぞろとコップを持って集まって来た。
背が低いので見えなくなるから、お立ち台を作り、その上に登った。
「では、まず回復魔法をかけますので、10人ずつに固まって下さい。回復魔法が終わった方は、横の女の子から、飲み物を貰って飲んで下さい。
食べ物は全員の治療後に配布しますので、暫くお待ちください。」
そして、10人ずつヒールをかけ、横のフェリンシアがラピスの泉のハチミツ水を配る。
≪ピロリン♪ 魔法:聖Lv2を取得しました。≫
そして、飲んだ人たちが見る見る内に元気になって、キャンプに活気が戻って来る。
最後の1組が治療を終えると、みんなから感謝の声が上がる。
そこへ、ラピスが戻ってきて、水が汚染された原因を語る。
「私はラピス。水の精霊王です。ここの井戸水ですが、何者かによって、腐った魔物の内臓が中に投げ込まれていたわ。これが原因よ!」
と布袋を取り出した。
「今は、井戸の水を浄化したから、そこらの水より、良い物になったわ、安心してね。」
と付け加える。
海渡は何処かに実行犯が紛れている可能性を考え、マップで敵意のある者を確認していた。
すると2名男達が、敵意を向けているのを発見。こちらと目が合った瞬間、「ヤバい」と逃げに入る。
瞬時に、20m前方で逃げに入っていた2名に軽い電気ショックの魔法を放ち、麻痺させて倒す。
昏倒してる男達を縛り上げ、お立ち台まで引き摺って行き、みんなにこいつらを知ってるかを聞くが、誰も知らなかった。
「では、今から食べ物・・・取り合えず消化の良いスープを配ります。それで最初は慣らしてください。 あとはお肉を置いて行きますので、みんなで食べて下さい。」
と伝える。
今度は寸胴のオークスープを配るフェリンシア。
土魔法で竈を作り、薪で熱して、塩コショウをした、オーク肉を焼いていく。
元気になった人に、あとはちゃんとみんなで別けて と伝える。
横に長いテーブルを作り、その上に食材を置いて行く。
小麦粉2袋、大豆2袋、塩3壺、砂糖3壺、野菜類オーク肉塊30kg、スイート・ボア1匹・・・等を並べた。
フェリンシアがスープを配り終わった頃、アルマーさん率いる、衛兵と騎士が駆けつけて来た。
危機的状況は脱した事、犯人らしき人物2人を引き渡し、証拠の腐った内臓の入った布袋も渡した。
アルマーさんから、お礼を言われ、「たまたまですよ。」と言い、その場を後しする。
最後に、小さい子供らの居るお母さんテントに寄って、再度状況を確認する。
彼女らにも、食べ物を与えつつ、状況を聞いた。
やはり、アニータさんたちと同じ様な状況で、しかも母子家庭で小さい子を抱え、働くに働けない状況らしい。
うーん・・・何とか力になる方法は無いかと考え、彼女ら4人の同意を貰って鑑定をすると・・・
1人は、調理スキルを持っていた。
もう1人は裁縫スキルを持っていた。
更にもう1人は火、水、風、土、光の魔法と魔法付与スキルを持っていた。
最後の1人は水魔法と戦闘系スキルを持っていた。
彼女らに、もし避難勧告が解除されたら、元の所に戻るのかを聞くと、元々向こうでも幼い子供を抱え、日々食うや食わずが続いており、帰る場所も無いとの事。
そこで提案。
「私は、カイトと言いまして、冒険者をやっています。また商会を立ち上げ、現在店舗のオープン準備をしています。魔道具も作ってまして、付与が出来る人を探そうとしてました。
店の警備が出来る人材も探してまして、更に人数も増えたので、調理スキルのある人も探してます。また、冒険者向けの製品等を作るので、裁縫スキルを持っている人も探してます。
良かったら、うちに住み込みで働きませんか? 子供がある程度手が離れるまでは、託児所を作るので、そこで1人が全員を見ている間に、仕事をしてもらう。
勿論託児所で、子供の面倒を看る人もそれが仕事なので、ちゃんとお給料を支払います。
1人で子供、仕事も となると、無理でしょうけど、お母さん方が何人かで、グループを作り、面倒を看るなら、可能なんじゃないでしょうか?
当分はまだ一番小さい赤ちゃんを持っている方がメインで、子供らの面倒を看る形にしないと、ダメだと思いますが、安全な所で寝泊りし、安全な食事を毎食食べ、安全な環境で子供らを育てる方が良いんじゃないでしょうか?」と。
すると、全員即決で「「「「お願いします!」」」と快諾してくれた。
と言う事で、彼女らと殆ど荷物らしい荷物のない彼女らと子供を引き連れ、ゾロゾロと敷地へと帰る。
ちなみに、彼女らの名前は、
アンジェラさん 25歳 料理スキル 2児の母 6歳の男の子(ジュード) 4歳女の子(マリン)
リンダさん 24歳 裁縫スキル 1児の母 4歳男の子(サイラー)
マルティーさん 28歳 火、水、風、土、光 魔法付与スキル 1児の母 9歳女の子(ステラ)
アマンダさん 20歳 水 戦闘系スキル 1児の母 9か月女の子(アイナ)
色々な経過と状況をヨーコさんに伝え、結果彼女らを住み込みで雇い、託児所を作る事にしたと伝えた。
この世界に無い、『託児所』と言う発想に、ヨーコさんは痛く感激し、絶賛していた。
色々押し付けるようで、申し訳ないが、彼女らの事も宜しく頼むとヨーコさんにお願いした。
あと、アニータさん達もだが、彼女らも殆ど着替えが無い事もあるので、子供らを含め、上から下まで着替えを5着づつ揃えてやってくれと、お金を渡しておいた。
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