第77話

 さて、砂糖という武器を新たに得て、意気揚々と領主様の館へと戻る。


 夕食後にスタッフ候補との引き合わせがあるんだけど、出来ればその前に、料理長に砂糖を見て貰って、プロの意見を聞きたい。


 なので、真っ直ぐキッチンの方へ向かう。

 そろそろ夕食の準備入ってる筈だから、邪魔にならないように手短にすませなきゃな。


 キッチンに入ると、既にスタッフがシェフの指揮のもと、忙し気に動き回っている。


「料理長、お忙しい時間に申し訳ないのですが、30秒だけお時間頂けますか? この砂糖を味見して貰いたいのです。」

と、壺を出す。


「おお、カイト君か、良いぞ! 40秒なw」と


 足早に寄って来て、壺の中身を見ると、

「真っ白な・・・これが砂糖か!!」

と驚きつつ、一つかみして、口へ入れた。


「これは・・・凄いな。雑味も嫌味も無い。凄い砂糖じゃないか!! これを何処で?」

と料理長が聞いてきた。


「まあ、これからうちで製造していく砂糖・・・白砂糖と言います。そうですか、評価が良かったようなので、安心しました。まだ試作なので、少量なのですが、早々に量産する予定なので、期待しておいて下さい。」

と伝えた。


 しかし、予想外だったのは、砂糖の壺を離さなくなってしまい、「使わせろ!」と強烈にお願いされ、取り合えず、1壺分は先渡しとなりました。


 早速今夜の夕食に使うそうです。

 まあ、取り合えずは自分らの分を譲った事にすれば、良いか。


 お風呂に入り、1日の汚れと疲れ(という程この体になって疲れないんだけどね)を流し、一休みした頃、夕食となった。


 さて、夕食後 領主様の書斎にて。


 開口一番、

「何やら、今日も面白そうな事をしていたらしいな!」

とアルマーさんが笑ってる。


「ええ、実は、これを作ってました。」

と、白砂糖の入った壺をテーブルに出して、蓋を開ける。


「ほう、この白い粉は?」

と聞くので、スプーンを出して、少量掬って手渡し、


「舐めてみて下さい。砂糖と言うか白砂糖と言います。」

と言うと、アルマーさんは、ハッと察した顔になり、舐めてみる。


「ほほう!これは凄いな!! 出回っている砂糖の様な雑味が全くない。最高級品でもこれには叶わないぞ!」

と、太鼓判を押してくれる。


「一応、料理長からも高評価を頂いたので、これを当商会のラインナップに加えようと思ってますw」

と悪い顔で笑う。


「ふっふっふ。実に面白い。で、これはやっぱり甘芋から作るのか?」

と聞くアルマーさん。


「流石ですね。実はこれは甘芋とは無関係の植物から作る砂糖です。しかも甘芋よりも糖分が多く、栽培条件も緩やかで、収穫周期も雪さえ降らなければ、約2ヵ月毎に採れます。」

と、答えると、


「はっはっは!これは愉快な事になるなw 塩に加え砂糖まで・・・奴の3本柱の2本は折れたな! 残りは魔道具だが、これも時間の問題か!?」

と大喜び。


「その為にも、商会の稼働を急がないといけませんね。 一応その砂糖はそちらにお渡ししておきますね。

 で、問題の店舗の模型ですが・・・」と


 応接用のテーブルには乗らないので、床の空いてるスペースへと取り出す。


「ああ、説明の前に、話していたスタッフ候補に引き合わせる。 おーーい、入ってくれ!」

と声をかけると、ドアが開き、男女2名が入って来た。


「紹介するよ、彼はオスカー。ケージの甥にあたる。商人になろうと、商会で修行していたんだが、今回の話で、是非に と言ってくれてな。

 彼女は、もしかして遭った事あるかも知れないが、ヨーコといって、この館の蔵書庫の管理をしている。

 本来彼女は非常に優秀だから、別の役職を打診していたんだが、本が好きだからと、蔵書庫を管理になっていた。

 どちらも、カイト君の話をしたら、是非に と言ってくれたので、紹介しようという事にした。」


 おおお!! あの蔵書庫の秘書子さんだよ! 今日もバリっとしたOL風スーツが似合ってます!


 あと、オスカーさんは、25歳ぐらい? 多分元の体の俺と同じぐらいの歳かな。とても精悍な顔立ちに栗毛色の髪の毛、イケメンだよ。

 しかも物腰が柔らかく、番頭さんとして頼りになりそうだ。


「オスカーさん、初めまして、カイトです。ヨーコさん、2度目ですね。蔵書庫ではお世話になりました。

 この度、商会と魔道具工房、飲食店を開く事になりまして、こんな子供の下だとご不快かも知れませんが、お力をお貸し頂けると助かります。」

と、軽く頭を下げた。


「オスカーです。この度は願っても無い話に、飛びついてしまいました。誠心誠意頑張らせて頂きますので、宜しくお願い致します。」


「ヨーコです。お久しぶりですね、海渡様。本が好きで蔵書庫に籠っておりましたが、あなたのお手伝いは、本以上に面白そうなので、是非にとお願いしました。宜しくお願い致しますね。」

とお二人ともニッコリ笑ってる。


 ああ、何かこの二人ってお似合いだなぁ・・・(ちょっと癪だけど)


 と言う事で、正式にお願いする事としました。

 役職としては、オスカーさんは当面商会の副会長(番頭兼任)、ヨーコさんは秘書(兼カフェ部門の店長予定)


 で、現在大人3人、幼児1人が模型を取り囲み、説明を行ってます。

「この店舗部分の1階で(と、ここで2階3階部分を取り外す)、食品関係(塩や砂糖やその他)を販売する予定です。

 で、この通りに面した部分はショーウィンドーと言いまして、この様に全面ガラス張りで、一推し商品を展示する様な感じに考えてます。

 後ろはバックヤードとスタッフルームとトイレです。バックヤードとスタッフルームの後ろにはスタッフ用の階段があります。


 では、次2階部分です。(と、2階部分だけを乗せる) ここでは、冒険者向けの物や魔道具を中心に扱う予定です。現在考えている魔道具は、マジックバック、マジックポーチ、野営用簡易結界、テント用エアコン&空気清浄機、あと幾つか考えている物もありますので、そこら辺を販売出来ればと思ってます。

 次は3階です。(と、屋根の無い3階部分を被せる) この3階は商会の事務所や商談等を行う応接室、会長室なんかを置く予定です。3階へは、この店舗の横の直通階段も使えるようにします。


 あと、これはまだ未確定なんですが、この1階から2階への導線は、エスカレーターと言う魔道具を作ってみたいと考えてます。

 まあ成功しなければ、普通の階段になりますが、成功すれば、度肝を抜く様な物になるので是非、成功させたいと思ってます。


 さて、今度はこちらのカフェ部分です。

 こちらは当面2階建てを考えてます。


 1階はオープンテラスのカフェエリアと、ガラス張りの店内にテーブル席とカウンターを少し置き、中で食べる事も可能にします。

 メインは持ち帰りも出来る、スィーツ・・・まあ甘いお菓子類です。

 このメニューは随時増やしていきます。多分この国には無いようなお菓子になります。

 お菓子は、このガラス張りの冷蔵ディスプレに展示しつつ、客に選ばせて注文品を箱に詰める感じで考えてます。


 2階部分は食堂・・・と言うかちょっと洒落た感じのレストラン風にしまして、先日作った様な独自の料理等を

 出す予定です。まあ、スタッフの加減もありますので、当面は1階のカフェのみのオープンになるかも知れませんが。」

と一気に説明した。


 3人ともポカンと口を開けていたが、一拍置いて拍手喝采!

「凄いな!!!この短時間で、ここまでの計画!」

とアルマーさん。


「カイト様、凄いですよこれ!! 絶対にもの凄い事になります!」

とオスカーさん。


「やはりカイト様は面白い! これから楽しみですわ!」

とヨーコさん。


「ところで、問題なんだが、この前面にあるガラスだが、そんなに大きなガラスは無いぞ? あと、建物の建築はどうする?」

とアルマーさん。


「ええ、ガラスの件は存じてます。一応製作する目途がたったので、採用しました。

 建物ですが、本来なら経済循環を考えて、町の大工なりにお願いすべきだと思うのですが、それだとかなりの月日が掛かりそうですし、そうしてる間に避難民が増えたりで、食糧事情とかで困る人が増えそうですから、時間短縮の為に、建物自体は自分の魔法で何とかしようかと考えてます。


 ドアとか調度品は職人さんや大工さんにお願いするようにすれば、かなり時間短縮できるかと。」

と答えると、


「そうなのか! これは王国全土に衝撃が走るな!!!」

と愉快そうに笑う。


「塩も砂糖も元の価格の半額を考えてます。これで、ドンドン奴らを追い詰めましょうw」

と黒い笑みを浮かべる海渡であった。


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