第71話
やはり、シスター達は見た。 女神の像が一瞬輝くのを。 ザワザワとしているしている。
女神の像が光ったのを知らない海渡は、何食わぬ顔で、
「すみません、ちょっと孤児院の子供達の事で、お聞きしたい事があるのですが?」
とシスター達に声をかける。
すると、先ほどのシスター、セーラが代表で海渡達の所へやって来て、
「では、応接室の方で、お聞きしますので、こちらへ」
と先導してくれた。
応接室は、質素だが、綺麗に掃除が行き届いていた。
勧められたソファーに座り、質素だがお茶が出て来た。
「あまり良いお茶は無いのですが、どうぞ で、どういった事でしょうか?」と。
「実は、私とフェリンシアは、冒険者をやっておりまして、(と、ここでSSランクのギルドカードを提示する) 縁あって、領主様より、商業地区の空き物件を譲って頂いたので、そこで、商会を開き、飲食や店や魔道具の工房を作ろうと思っているのです。 で、孤児院では、読み書きや計算を教えたりされていると聞きました。
また定員の問題とかで、12歳ぐらいには孤児院を出なくてはいけない・・・と言う話も聞いておりまして、出来れば何名か優秀な人を雇う事は出来ないかと、やってまいりました。
まあ、当分は店舗等の建設や、空き地部分の草を刈ったりと言う雑務になりますが・・・。
勿論、賃金もちゃんとお支払いしますし、住み込みで屋敷を管理してくれるメイドとかも、募集しようかと思ってます。如何でしょうか?
一応、これが商業ギルドの方のカードです。」
と金色のSランクの商業ギルドカードを見せる。
「あと、料理スキルを持っている子とかが何人か居れば、尚良いのですが。」
と付け加えた。
セーラも驚いた。
冒険者ギルドのSSランクで商業ギルドのSランク・・・それが各々どれ程のものかぐらいは想像出来る。
しかも聞けば、どうやら旧領主館の跡地を領主様より譲り受けたらしい。
それが意味する事は、あの良政をで領民から慕われている領主様に信頼されている人物だと推測できる。
こんなに幼い子なのに・・・。
受け答えもシッカリしてて、そこらの貴族の子供でも太刀打ち出来ない程の利発さが伺える。
しかし、子供らを働かせるとなったら、それだけではダメだと思う。
初めて話す子だし、シッカリしてても、まだ幼児だしね・・・と冷静になる。
そんな事を考えているセーラのの心を読んでいるかの様に、
「まあ、いきなりこんな歳の子供がやってきて、雇いたいとか言われても、信用出来ないのは理解出来ます。一応、領主様からも、私の補佐をしてくれる信頼のおける方を何人かご紹介頂く事になってます。
また、その方達が決まってから、正式な話をしたいと思っております。どうか、長い目でお眼鏡に叶うかを確認してください。」
と言う海渡に驚くセーラ。
そして、戸惑いつつも日々厳しくなっていく孤児院の運営を考えつつ、
「判りました。前向きに検討させて貰います。一応、12歳になる子達にも、それとなく打診しておきますね。とは言え、このところ年々孤児が増えておりまして、領主様の援助はあるものの、なかなか厳しい状態ですから、安心して子供達が巣立って行ける所が増えるのは、本当に嬉しい事です。どうぞ宜しくお願いしますね。」
と返事をする。
海渡は、
「そう言って頂けると助かります。ところで、今聞いた話だと、かなり孤児院の運営厳しいんでしょうか?」
と心配になって聞く。
「はい、正直な所、孤児院は現在、パンク状態ですが、避難民の方も増えて来てまして、食料全般が値上がりしている事もあり、子供達も薬草を採取したりして、手伝ってはくれているのですが、焼け石に水の様な状態です。」
と窮状を嘆くセーラ。
「そうでしたか。じゃあ、少し前倒しですが、子供達何人かに雑草刈りの短期のお仕事をお願い出来ませんでしょうか?
勿論安全な街の中の屋敷の敷地内ですから、魔物が出る事はありません。1人辺り、1日5時間で銀貨1枚で如何でしょうか?
3日以内に終われば、ボーナスとして、更に1人銀貨2枚を追加します。3日で1人銀貨5枚ぐらいにはなるかと。人数は、そうですね・・・あの広さだから15人ぐらいいれば大丈夫かと思います。如何でしょうか? 勿論、何方か大人の方が付いて来ても構いません。同じ条件でお支払いします。」
と海渡が提案する。
「まあ、それは凄く良い条件ですね。是非お願い致します。早速これから子供らに声を掛けます。子供らも喜びます。」
とセーラも大乗り気になる。
「あと、それとは別に、これは心ばかりではありますが、こちらを寄付させて下さい。」
と白金貨2枚をそっと懐から出す。
「え?」っと差し出された、白金貨2枚を見て固まるセーラ。
日本円換算で約2億円。
「これで、暫くは何とかなりますかね? こちらも早く信頼して貰えるように準備進めますので。」
と海渡。
「こ、こんなに頂いて良いんでしょうか?」
とセーラが戸惑いつつ聞く。
「ええ、これでもSSランクの冒険者でもありますし、まだ清算が終わってない、素材も沢山ありますので、また寄付出来ると思います。 商会や店が軌道に乗れば、定期的に寄付出来ますので、こちらは安心してお役立て下さい。」
「ああ、ありがとうございます。本当に助かります。」
と心からの笑みと、安心の声を出す。
「あ、食材も、大豆とかなら、手持ちが結構ありますから、お分け出来ますが、使えますか?」
と追加で提案する海渡に
「ええ、もし少しでもお分けして頂けるなら、大いに助かります。」
と喜ぶセーラ。
「えっと、じゃあどうしましょうか? キッチンか倉庫に案内して頂けますか?」と海渡が言うと、
「え? 今ですか? 何もお持ちではない様に見えますけど?」
と不思議がるセーラの問に、
「シスターである、セーラさんを信頼して話ますが、私はアイテムボックスと言うスキルを持ってまして。手ぶらに見えても、常時色々持ち歩いているんですよ。」と海渡が説明する。
すると、セーラは興奮しながら、
「まあ、御伽噺に出て来る様なレアなスキルじゃないですか! 凄いですね。」
とはしゃぐ。
そして、キッチンへと連れて行って貰い、指定された場所へ、大豆の袋(オーク倉庫から奪取)を取り合えず5袋出した。
「あと、オークの肉と塩も少しお分けしますね。」
と、キッチンの作業台の上に、大きな葉を敷いて、オークの肉塊を20kg程出し、その横に岩塩を砕いて入れた土魔法製の壺を出す。
ポンポンと手から飛び出す物とその量に
「まぁ・・・こんなに・・・」
と再び固まるセーラ。
「人数居るみたいだから、これぐらいだったら、痛む前に食べられますよね?」
と確認する海渡に、
「はい、大丈夫です!」
と気持ちの良い返事を返すセーラだった。
「では、礼拝堂の方でお待ちいただけますか? これから子供らに雑草刈のお仕事の件を話てきます。」
と、颯爽とセーラは飛び出して行ったのだった。
キッチンにポツンと取り残された海渡とフェリンシアの2人・・・。
「えっと、ここから礼拝堂?あの祭壇のある所か・・・どうやって行くんだ?」
と考え込むが・・・
『えっと、マッピングで建物の間取図出てますから、見て下さい。』
と知恵子さん。
ああ、そうだ。そうだったなw と思い出し、礼拝堂へと戻るのだった。
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