武闘派考古学者を夢みて・・・異世界サバイバル
気怠い月曜
プロローグ
当物語の主人公、冴島海渡(さえじま かいと)27歳 独身 武闘派考古学者を目指した者である。
名前の由来は、海渡が生まれた時、丁度坂本龍馬のドラマが流行っていて、生まれた子に、「海を渡って世界に羽ばたく様な人になるように」
と言う事と、「カイトだけに、天(トップ)まで上がれ!」を掛けて、海渡と名付けられた。
その海渡は、現在大きな光の環に吸い込まれ?、流れる光の粒子の中を落下中?である。
何故「落下中?」の「?」なのかと言うと、重力も風圧も感じず、ただ周りの粒子が上へと凄い速度で、舞い上がっているのだ。
足元を見ると、地面は見えずに中心は真っ暗で、ただ体感は浮いてる様な浮遊感。
とても変な感じだが、落下している様な恐怖は無い。
どれくらい落ちているのか? 時間も距離も判らない。
だが終わりがやってきた。
足元に小さい赤い光の点が見え、その赤い点は、急速に『環』へと形を変え、ドンドン迫って来る。
この速度で着地すると、両足骨折ぐらいでは収まりそうにない。
「良くて瀕死、悪くて即死かな・・・」
と瞬時に思うが、いや、瀕死の方が最悪か・・・と冷静に考えていた。
そして、迫りくる赤い光の環が目前に迫り、思わず目を瞑った。
だが、予想した衝撃も、痛みもなく、浮遊感は消え去った。
周囲を高速で流れていた光の粒子も、赤い光の環も消え、海渡は地下の大理石の様なタイルが敷き詰められた、ホールの様な場所に立っていた。
ホール内部の天井は高く、適度に光っているので、ヘルメットに付けているLEDライトを消した。
「ここは何処だ??」
落下までと全く違う周囲の景色に驚きつつも、瞬時に現状把握と、これからの行動の優先順位を考えていく。
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きっかけは、幼稚園の頃に父と見た某鞭使いの考古学者映画、イン〇ィー・ジョーンズ。
「考古学者かっけーーー!」と大興奮し、取り合えず、エジプトのピラミッドを探検したいと、父親を困らせる。
「海渡、遺跡って、エジプトのピラミッドだけじゃないんだぞ! 日本にだって前方後円墳という古墳があるんだよ。」
と、近場で誤魔化す気の父親に近県の古墳と古代博物館を見に連れて行ってもらった。
一時的なマイブームで終わる事を予想した父親の計算外だったのは、土偶や埴輪を見た海渡が更に嵌まった事だろう。
小学1年生になった海渡は父のパソコンを使ってネットサーフィンし、色々な考古学のサイトや写真を閲覧し、読めない漢字や意味等を、自主的に学び出した。
勉強になるのは良いのだが、全く外で遊ばない事に、両親は心を悩ませる。
しかし、小学3年生になった頃、海渡は「お父さん、僕、剣道をやりたい」と言い出した。
それまで家に籠りがちだった事もあり、両親大喜びで、近所の道場に入門する事となった。
ガリヒョロだった海渡だが、週4回の剣道の道場通いに加え、自主練のお陰で、中学に上がる頃には身長170cm、腹筋割れの細マッチョ予備軍となっていた。
小学校までは、内向的だった性格も、真面目なままだが社交的なコミュニケーションも取れるようになった。
が、両親は知らなかった・・・実は、海渡が通う剣道の道場は、一般の町道場ではなく、日本で唯一残った知る人ぞ知る、実戦剣術の家元であった事を。
敷地の大きな古い武家屋敷の様な道場には、何故か鍛冶場まで隣接していた。
この鍛冶場では、彼らが使う刀や独特の手裏剣等を作成し、地下室の武器庫に蓄えてあった。
ガチにヤバい道場である。
剣道だけを習っていると思っていたが、この流派、忍や体術や独自の武器を作る鍛冶まで、多岐にわたって教え込んでいたのだった。
元来の勤勉な性格のお陰で、高校生3年の頃には、剣術は師範との試合で10回中3回は致命打を取れる程に、忍に関しては、半径15mぐらいの気配を察知し、更に夕暮れぐらいだと自分の気配を一般人に悟られない程にはなった。
鍛冶に関しては、自分の使う武器(刀や手裏剣類)やその他の補助アイテムぐらいは、打てるようになった。
勉学は常に学年10番以内に入る程で、引き締まった体と、頭の回転の良い会話で、学校では女子にファンが居たりする。
が!女の子が嫌い!!って訳ではなく、元々恋愛脳的思考と無縁の方向にしか興味が無かったので、殺気や敵意に関してのレーダーは、凄い性能を発揮する気配察知能力も、恋愛レーダーは小学生以下という、なかなかに残念なナイスガイではあった。
まあ、週4日(+2日)で道場に通っていれば、デートだ合コンだ!って時間はないのも事実。
そして、国立大学の希望学部へと進学。
海渡の両親が計算外だったのは、考古学熱は小学校で消えたと思っていた事。
てっきり、工学部系に進学すると思っていたのだが、高校3年の進路希望時に、考古学部へ進学したいと言われ、「「えっ!!?」」と
気付いた事だった。
考古学への思いを熱く語り始めた海渡に、
「まさか、和製イン〇ィー・ジョーンズをいまだに目指していたとは・・・」と、両親は苦笑いするしかなかった。
大学から大学院へと進み、考古学の研究室へ所属する事となる。
「武道に終わりは無い」との師匠の言葉通り、頻度こそは減ったものの、今でも道場へは時間のある限り通っている。
そんな彼の引き締まった体を見た大学の友人は、「インテリ筋肉」と呼んだ。
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