ゲーム廃人サラリーマン、異世界に召喚されたので勇者になってみる。
じょにぃ
プロローグ
00話 召喚
ー遥か昔、災厄と恐れられた魔王バーブ・イリムの復活により、世界は騒乱に包まれた。
家々は吹き飛ばされ、最強の軍事力と名高い帝国護衛兵も全滅した。
人々の中にはさ迷い問う者も、戸惑い乞う者もいた。
そんな混乱の中、神が願いを聞き入れたのか、一筋の光が眼前に降り注ぎ、神々しい妖気オーラを纏った者が空から降り立った。
「ま、まさか…あなた様は…!?」『〝勇者〟カズヤ様!!』…ー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
目覚ましが鳴り響く。カーテンから覗く朝日。小鳥のさえずり。いつもと変わらぬ朝である。
ーただし、今日は一味違う。
そう、サラリーマンにとっての……
…おっと、その前に。
俺の名前は斎藤和也。東大卒と、なかなか学歴はいいのだが、全くモテない32歳独身男性だ。
会社では、毎日エリートなサラリーマンを演じきっている。
なぜ演じなきゃいけないのかって?
そりゃ…あの…その……も、モテたいからだ!
かっこいいだろ?仕事ができる男性って。
エリートなサラリーマンを演じているので、
ただ、そんな〝超〟エリートな俺を狂わせたものがある。
そう、〈ゲーム〉 だ 。
半年前、今まで勉強しかしてこなかった俺は、自己紹介用に趣味を作ろうと考えた末、ゲームに手を出したのだ。
今となってはそれは失敗だったと思っている。なにせ、休日は外に出ず、引きこもって一日中ゲームをしているからだ。
今はかろうじて仕事に行っているが、それもいつまで続くか分からない。
-そう、完全に〝廃人はいじん〟と化してしまっているのだ。-
そろそろ話を戻そう。
そう、サラリーマンにとって休日はオアシスである。
日々頑張って仕事をし、溜まったストレスを発散する、大切なリフレッシュの日なのだ。
にもかかわらず、俺は全くリフレッシュなんてできていない。
なんとなくお分かりだろうが、寝ないでゲームをしているからだ。そもそも…
-ピンポーンー
休日なのに誰だよ…?え、出ろって?分かりましたよ…。出ますよ、出ればいいんでしょ!?まったくもう…
「はーい」
「宅配便でーす!斎藤和也様宛てのお荷物でーす!」
出てよかった。宅配便だったようだ。え?ほら出てよかったじゃないかって?うるさいなぁ…。というか、宅配便?なんか注文してたかな?
何かを注文した記憶は一切無いが、俺は無造作に段ボール箱のガムテープを剥がす。
ーベリベリッー
≪ボックスの開封を確認。転移魔法の準備を開始します。≫
ん?今なんか聞こえたような気がするんだが…?
まぁパソコンの通知かなにかだろうな。
で、中身はなんだ………?
箱の中には、ゲームソフトらしき物と説明書が入っていた。
ゲームじゃん!!やったぜ!イェーイ!!
…おっと、取り乱してしまった。それにしても、なんだこのゲーム?注文した覚えはないし…なにしろ、パッケージになにも書いていないじゃないか。
こんなに怪しい物、開けてもよかったんだろうか?とにかく説明書を読んで判断するとするか……?
-------------------------------------------------
「何なんだこれは!?」
驚くのも無理はないと思う。なにせ東大卒の俺ですら、読める言語が一つも書いてないのだから。
何語だよ?ヒンディー語か?スワヒリ語か?だったら読めるはずだよな…
…考えていても仕方がない。とりあえず、おそらく謎のソフトに対応しているであろうゲーム機に、入れてみることにしよう。
≪起動していただき、ありがとうございます。まず、あなたのお名前を入力してください。≫
脳内に直接響くような声。いや、実際に響いているように感じる。
まぁいい。名前を入力しよう。カ・ズ・ヤっと。
≪カズヤ様、ですね。次に、カズヤ様の役職を選択してください。≫
役職?サラリーマンですけど?
≪勇者・魔法使い・戦士・魔物の4つがございます。≫
そっちか。うーん…そういえば小さい時の夢は魔法使いだったなぁ…。逆に、最近人気の小説みたいに、魔物メインのストーリーも面白そうだな…。でもやっぱ、男なら勇者に限るっ!
≪役職:〝勇者〟の選択を確認。転移魔法陣を起動します。≫
その声と同時に、俺ん家の床に、美しく、巨大な魔法陣が描かれていく。
「やっと見つけたぞ……"真の勇者"よ!!! さぁ、我と共に来るがよい!!!」
「うわぁ…」
何者かに話しかけられたが、それが聞こえず、驚きから思わず声を漏らしてしまう俺を余所に、何者かによる魔法の詠唱らしき呪文が、坦々と読み上げられる。
起動した魔法陣は、足元へと移動し、俺の身体を呑み込んでいく。
…意識が段々と薄れていく。視界に入るのは、一筋の光のみ。
死ぬ時って…こんな感じなんだなぁ…
俺の意識は、その光に近づいていく。そこで俺は、死を迎えたのだと悟った。
「つまらない人生だったな…。」
最期にそうつぶやいた俺は、ゆっくりと暗闇へ沈んでいった。
-----------------------------------------
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます