第四十三話:憤怒、悲痛、憎悪、慟哭、――後悔
――かつての日々、とある日の事。
蛮族の問題もまだそこまで深刻ではなく、あくまでドラゴンタンへの派兵で事足りるだろうとマイノグーラの誰しもが考えていた頃。
「おっきな月ー」
「月なんて、まともに見たのは久しぶりなのです」
二人の少女が、とある巨木の頂きで夜空を眺めていた。
マイノグーラの森はその特性によって現在呪われた土地となっている。
木々は不規則に捻れ、登ることはおろか満足に足場を確保することすら難しい。
だが森の民であるエルフ――その近縁種であるダークエルフならこの程度お手の物だ。
街のはずれにあるひときわ高い巨木に登ることも、彼女達にとってはまるで近所を散歩する程度のことであった。
……とはいえ二人の立場や年齢を考えるとこの時間にこんな場所で油を売っていることはゆゆしき問題である。
特に彼女たちの母親代わりとなっている、少しだけ過保護で心配性な英雄イスラから小言を食らうことは間違いないであろう。
だからこれは二人の小さな冒険だった。
平和で幸せな生活が、少しばかり二人の少女を勇敢にしてみせたのだ。
ひときわ高い場所から見渡す景色は、自分たちが知っているそれとは大きく違っていた。
辺り一面には毒々しい色合いの木々が海のように広がり、反対に雲一つ無い空は宝石箱の中身をばらまいたかのようにキラキラと輝いている。
そして何より特徴的なのは……まるで太陽の如く辺りを明るく照らし、だが慈愛の籠もった温かな光で彼女達を見つめる巨大な月の存在だった。
マイノグーラの宮殿よりその明かりを見つけたことが、この小さな冒険の発端であり最終目標だった。
「お月様が綺麗ですね」
久しく見ていなかった月をキラキラとした瞳で眺めていた妹のキャリアは、姉のメアリアが突然口にした言葉に首を傾げた。
確かに月は明るく二人を照らし、美しく輝いている。
だが姉の言葉は自然と出たものというより、何か定められたセリフめいたものがあったのだ。
「お月様は綺麗ですけど……それって何なのです、お姉ちゃんさん?」
「んー? 王さまが言ってた。『月が綺麗ですね』って言うと、『貴方を愛してます』って言う意味になるんだって」
妹の問いに、姉は珍しく柔らかな笑みを浮かべるとキャリアの方へと顔を向けた。
それは何時のことだったか、自分たちの王が月を見上げて不思議そうに「ここにも月があるんだ」と呟いていたことに端を発する。
すでに王とは親しい関係になっていたメアリアが好奇心のおもむくままにその意図を尋ねたところ、望んでいた答えとは別に返ってきたものがその逸話だった。
誤魔化された……と少女なりに理解はしていたのだが、それ以上に王が語った話が興味深く面白かったため不満よりも感動の方が強く、故に心に残っていた。
だからこそ、この場で美しい月を見たときに不意にその言葉が口をついてでた。
「わぁ! 初めて聞いたのです! 王さまは物知りなのです!」
「うんー。私も初めて聞いた。王さまは何でも知ってるー」
特別な王さまとの秘密を、同じく特別な妹と共有する。
自分が初めてその逸話を聞いたときのように目を輝かせて喜ぶ妹を見て、普段捉えどころ無い姉のメアリアは珍しく誰に見ても分かるように笑顔を浮かべる。
それは歳頃の少女そのもので、二人が悲しく辛い過去を抱きながらここまで生きながらえたことを忘れさせてくれるようでもあった。
……マイノグーラの国民となり、そして王の侍女となり……。
二人の心の傷は確かに癒えつつあった。
かつての逃避行、その際に彼女達は自らの母親の肉を、命を長らえる為に食べている。
それは彼女たちの母親が自ら言い出したことであり、食糧難に陥ったダークエルフの仲間を救う献身的な行いだった。
だがその実は病に冒されこのままでは死を待つ他無いと判断されていた自らの子を助ける為の取引であり、足手まといになるであろう彼女達の身の安全を部族の中で保証させる為の最後の手段でもあった。
二人の子供は、歳不相応な賢さがあった故にその裏に気づいていた。
結果、姉のキャリアは心を閉ざし、妹のメアリアは自らに罰を与えるかのように病の治療で出来た火傷跡を露出させている。
当初タクトの侍女を探す時点でモルタール老らマイノグーラの運営員達が双子の紹介に難色を示したのも当然だった。
双子の少女はダークエルフたちにとって仲間を食った忌むべき罪の証拠であり、その二人を王へと紹介するには酷い後ろめたさがあったのだ。
そして何より、その時の二人は致命的に壊れていた。
だが、そんな痛ましい出来事もすでに過去のものだ。
王の庇護下に入りようやく安らぎを得ることができた二人は、少しずつだが過去との折り合いをつけ、今を生きるようになっていた。
それを成したのはもちろん王であるイラ=タクトやその他の仲間達だ。
だがいつも死にたがっていた彼女たちが本当の意味で立ち上がることが出来るようになったのは、他ならぬ英雄イスラという存在がいたからであろう。
「って、お姉ちゃんさん。いつの間に王さまにそんな素敵なこと教えてもらってたのです??」
「んー? いつだろー? 秘密ー」
「あーっ! 誤魔化した! ずるいのです!」
妹の抗議にクスクスと笑いながら、メアリアは視線を月へと移す。
月の美しさと同時に親愛の言葉を伝える。
なんと素敵な言い回しだろうか。
それをこっそり教えてくれた王さまは、なんと優しく偉大なお方なのだろうか。
見上げる巨大な月はそれだけで不思議な力を与えてくれるようで、どんどんと幸せな気持ちと共に笑顔が浮かんでくる。
自分たちはこれからきっと、幸せになれるに違いない。
今まで苦労した分、世界は自分たちに微笑んでくれるに違いない。
だってこんなにも月が綺麗だから。
きっとこれは世界が自分たちに愛していると伝えてくれている証拠に違いないと。
これからは大好きな王さまと、大好きなイスラ、大好きなダークエルフの人たちと、大好きなマイノグーラの国でずっとずっと幸せに暮らすのだ。
死んでしまった人達の分まで。死んでしまった本当のお母さんたちの分まで。
生きろと言われた、その想いを胸に――。
まるで童話の終わり際に語られるそれのように、ずっとずっと幸せに暮らすのだと。
そう考えると、過去の出来事で凍り付いているメアリアの心がどんどんと溶かされていくようで、思わず浮かれた気持ちになってしまう。
「キャリア。お月様が綺麗ですね」
だから妹の手をとり、メアリアは伝えた。
突然のことに少しだけ驚いたキャリアだったが、その意図に気づいたのかパァっと花が咲いたかのような笑顔を浮かべると、少し頬を染めて手を握り返してくる。
「えへへ、お姉ちゃんさん、お月様が綺麗なのです!」
「ふふふー」
「えへへー」
二人の少女はころころと笑う。
本来であればそれは惹かれ合う男女に用意された言葉なのだが、この歳頃の少女にその機敏まで察することは無理があるというものだ。
もっとも、説明の時に気恥ずかしさを感じて誤魔化したタクトにも問題はあったが……。
ともあれ、少々用法に間違いはあるものの、親愛の情を伝えるという点ではその言葉は決して間違ってはいなかった。
そして満天の星と、海のように広がる樹海のみが存在するこの場において、月の美しさを家族に向ける親愛の言葉に例えることは、最も適切な表現であった。
「そうだ!」
だからだろう。
月のぬくもりが、キャリアに素敵な思いつきを運んできた。
「じゃあ今度、イスラお母さんも連れてくるのです。そうして二人でお月さまが綺麗ですねって、伝えるのです!」
「おーっ……そうする!」
とても凄いことを思いついたとばかりに、二人は瞳を輝かせる。
その提案がどれほどの意味と価値を持つかは、二人の少女の様子を見る限り明らかだ。
二人の少女にとって、イスラとは第二の母だ。
もちろん二人は本当の母親を忘れたことはない。
本当の母親がその命を捧げてくれたからこそ、彼女達はいまここで幸せに暮らすことが出来ているのだ。
いつも暖かく包んでくれたそのぬくもりを忘れてはいない。
同時に、心を閉ざしていた自分たちにイスラがどれほどの愛情を注いでくれたかも忘れてはいなかった。
なぜ英雄である彼女がそこまで気にかけてくれるかは分からない。
だが、破壊と殺戮しか知らぬはずのその異形の腕で優しく抱きしめてくれたそのぬくもりは確かなものだった。
「ふふふ。きっと今日以上に楽しい日になりそうなのです」
次の満月は何時になるだろうか?
その日が待ち遠しくてたまらない。
三人で見上げる月はどれほど美しく輝いているだろうか? その事を考えただけでキャリアは自然とワクワクした気持ちになり、いてもたってもいられず何をするでもなく思わず立ち上がってしまう。
「それまでの秘密だよ?」
「はいです、お姉ちゃんさん!」
「……ふふふ」
「……えへへ」
二人の少女はころころと笑った。
次の満月の時は、二人の新しい母親もここに連れてこよう。
もしかしたら夜更かしを咎められるかもしれないが、きっとイスラのことだ、なんだかんだ言いつつ許してくれるだろう。
三人でこの大きな月を眺めるのだ。
そうしてあの言葉を伝えよう。何よりも、大切な彼女に。
愛していると。
きっとその日は、何よりも素晴らしい一日になるだろうと信じて。
◇ ◇ ◇
「いやあああああああっ!!」
「お母さん!!」
フレマインの自爆による巨大な衝撃がその地に存在するあらゆるものを吹き飛ばした後――。
二人とその母は、この時点ではまだ生きていた。
否――彼女達の母イスラはもはや生きているのが奇跡といった状況であった。
鋼鉄をも超える強度を持つ皮膚はドロドロに焼け落ち、暴力的なまでの膂力を生み出していたその巨体はその半分ほどが消失し原形を保っていない。
幸いと表現するにはあまりにも酷い状態であったが、それでも頭部の損傷は免れておりその口腔からはギチギチと弱々しい声が漏れる。
やがて意識が戻ったのか、かつての彼女にしては酷く緩慢な動作で首をもたげたイスラは、自らの腕の中に抱え込んだ双子の少女へと視線を向け、その安否を確認する。
「だ、だいじょうぶ……です、か?」
戻ってくるのは双子の少女による嗚咽混じりの返答。
その顔は煤にまみれ、歪んだ表情はボロボロこぼれる涙でどろどろだが、それでも二人が健全であることは確認出来た。
その事実に、イスラは強い安堵の気持ちを抱く。
イスラは、この二人だけは何を持ってしても助けなくてはと思っていた。
それは……彼女にとってこの二人が本当の意味で娘と言える存在であったからだ。
なぜか? イスラは――今まで子供を持ったことが無かった。
エターナルネイションズというゲームの中の存在であるイスラ。
彼女が生み出す子蟲は彼女の子ではあるが、あくまでシステム上のものである。データ上そう設定されているだけで実際にどうかはまた別の話だった。
こちらの世界に召喚された後に生み出された子蟲であっても、子供というよりはどこか端末めいた無機質な印象があり、事実子蟲の思考形態は感情のある生物というよりも群体を構成するAIに似た性質を有していた。
人間的な感性を用いて語るのであれば、それは決して子供とは言いがたい代物であった。
……イスラは自らがただのゲームのデータである事を強く理解している。
全ての蟲の女王などという大それた名前を付けられていても、ただゼロとイチが生み出しただけの虚構の存在であると。
だからだろうか? 女王という設定を与えられた彼女は、この世界にやってきてからその内心において母性を発揮する対象を強く探していた。
応えれば反応が返ってくる。自らが庇護し愛すべきか弱い存在。
そんな中で現れ、自らを母と慕って甘えてくる双子の少女はきっとイスラにとって何者にも代えがたい宝物だったに違いない。
そう、自らの命をなげうってでも守りたいほどに。
「無事だったのですね。良かった、本当に、よかった……。では、今から言うことを、よく聞きな、さい」
「そんなことより、怪我が――!」
「そ、そうなのです! 早く王様にお願いして治してもらわないと!」
「わたくしは……大丈夫、です」
死の足音がヒタヒタと歩み寄ってくる音を聞きながら、イスラは力を振り絞って二人に語りかける。
真実を述べるのなら。双子の少女を犠牲にすればイスラは生きながらえる事ができた。
その強靱的な能力ですぐさま距離を取り、出来うる限りの防御姿勢を取れば良かったのだ。
そうすればいくらフレマインの能力が強力でかつブレイブクエスタスのイベントが悪辣だったとしても、同じくエターナルネイションズのシステムによってダメージを受けるだけで済んでいた。
だが自らの子を犠牲にすることを良しとする母は、そう多くはない。
血が親子の絆を証明するのだろうか?
過ごした時間が親子の絆を証明するのだろうか?
否、たとえ血が繋がっていなくとも、たとえその時間が短くとも……。
二人の少女は確かにイスラの娘で、二人とってイスラは確かに母親だった。
「分かっていると思いますが、わたくしは、もうダメです。だから、二人に託したいことがあります……」
残された時間はあまりにも少ない。そして残された手もあまりにも少ない。
突然訪れる最後に、こんなはずじゃなかったと叫びたい気持ちを抑え、イスラは必死に己の意識を保つ。
「いやっ!! いい子になるのです! だからっ、だから――!」
「な、なにか手は……」
「残念ですが、時間がありません」
「キャリアたちが弱いから、キャリアたちが幸せになろうとしたから! 幸せになろうとしたから、だからまたバチが当たったんだ!」
「どうして? どうしてみんな死んじゃうの? ただ一緒にいたいだけなのに。お母さんと一緒に居たいって言うのは、そんなに悪い事なの? 私たちは、そんなに悪い事をしたの?」
違うと、イスラは叫びたかった。
だがすでにその力も残されていない。
もはや彼女の命は風前の灯火、その前にやらねばならない事があった。
「一緒に死なせてお母さん。もう嫌、もう辛いのは嫌なの……」
「もう、こんなの生きてても仕方ないのです。生きててもやっぱりいいことなんてないのです」
「おねがい、さいごの言葉を……きいて」
「「…………」」
そう、彼女の望みは二人を生き残らせること。
この絶望的な状況から、なんとしてでも安全な地へと二人を送り届けなくてはならない。
現在イスラたちがいる場所はブレイブクエスタス魔王軍とマイノグーラ軍が戦う最前線だ。
フレマインによる自爆で何もかもが吹っ飛ばされたとはいえ、マイノグーラの救助が間に合う保証はどこにもない。
むしろ無限に湧き出るブレイブクエスタスの魔物達がこの地へと偵察にやってくる可能性の方が高いだろう。
だから、残された手段はこれしかなかった。
「二人に、お願いがあります――」
「「ひっ!」」
双子が同時に悲鳴を上げた。
自らの母が唐突に残った副椀を胸に突き刺し、己の心臓をえぐり出したからだ。
と同時に、イスラの意図を理解してしまった。
「おげぇぇぇぇっ!!」
「ひっ、ひっ、ひぃっ――」
キャリアが嘔吐し、メアリアが過呼吸の発作を起こす。
それは彼女たちの最もトラウマとするところであり、凄惨な記憶を思い起こさせることでもあった。
一度聞いたことがある。
イスラが取得可能な数多くの能力の中に、自らの力を継承するものがあることを。
その際には、継承者がイスラの心臓を食さなければならないことを……。
それはエターナルネイションズにおいては、イスラが撃破されたときに別のユニットを英雄化させるというなんの変哲も特色もない補助能力だ。
だが現実のものとなった際には、継承者に与える衝撃は計り知れないものとなっていた。
その愛が深ければ深いほどに……。
「先に逝く母をどうかゆるして、そして……最後の、お願いです……どうか、わたくしを食べて、生きながら、えなさい」
「やだ、やだやだやだ!」
「どうして、ひっ、ひっく、ひっ、どうしてよぉ……」
自らの行いがどれほど彼女達の心に傷を負わせるか、イスラは理解している。
理解していてなお、これしか選べる手段がなかった。
彼女達を苦しめると理解していてなお、愛する二人に生きて欲しいとそう願った。
「大丈夫。貴方たちは、このわたくしの可愛い娘ですもの……」
(主さま……申し訳ございません。どうかわたくしの勝手をお許しください)
そしてイスラは王の裁可を得ずにとあるスキルを取得する。
それこそが《王位継承》。
自らが撃破された際に、同じ国家のユニットに《英雄》スキルを付与するもの。
死にゆく者からの、最後の贈り物。
「王位継承――可愛い私の娘達。メアリア、キャリア……貴方たちに我が力の全てを譲ります」
ドクドクといまだ鼓動をうつイスラの心臓が手渡される
ところどころから青白い魔力を放つそれは、少女たちの手の上に乗るとより強い輝きを放つ。
やがて最後の灯火が消えるように光はか細くなり、
「――望むままに生きなさい。私の可愛い娘達」
英雄イスラはその生を終えた。
「――――愛しています」
「「いやあああああああああああ!!」」
少女達は、母を犠牲にして生きながらえることがどれほど辛く苦しいことかを知っている。
一度でも十分すぎるほどに苦しんだのに、もう一度同じ思いをしなければならないのだ。
だが二人は言われてしまった。
願われたしまったのだ。
最も愛する母に、生きてくれと。愛していると。
だから、二人の少女は――
また自らの母を――。
………
……
…
……ブレイブクエスタスのイベントは続いていた。
進行上において勇者に倒され消滅したフレマインは決して知ることがなかったが、物語には続きがあったのだ。
物語においてフレマインの奸計によって死ぬのは彼の師であり父親代わりの人物。
冒険当初から参加や離脱を繰り返しながらも時としてその強力な戦闘力で戦いを勝利に導いてきた勇敢で誇り高き人物だ。
そんな彼もまた、勇者を守る為に自ら犠牲となりその命を失うこととなる。
失意と絶望に嘆く勇者。
だが今際の際に告げられた言葉により、勇者は立ち上がる。
こうして師の想いと力を継承し、世界を救う為により強い決意を抱く。
この時受け継いだ力こそが伏線となり、やがて魔王が持つ力を打ち破り世界を平和へと導くきっかけとなる。
愛と勇気と、人の意志を継いだ冒険譚。
ならばその対象が邪悪なる者であったら?
自らの境遇に絶望し、ようやく手に入れた安寧を無残にも奪われ。
無力と失意の中、また母を食って生きながらえなければならぬ者であったなら?
破滅の王に祝福され、バケモノの意志を継ぐ、全てを憎む少女なら?
イベントは止められない。
都合良く誰かが助からないのなら、
世界にとって致命的なナニカが生まれることが都合良く止められるなどという妄言もまた実現できぬのが道理であろう。
様々な思いが混じり合った混沌は巨大なうねりとなって世界に満ちていく。
=System=============
※勇者―error―は真なる力に覚醒した!!
対象のステータスを昇格します。
………
対象の設定プロファイルが異常です。
ステータス昇格をキャンセ……
処理に■■■■によル介入が入riま死た。
ステータス昇格処理継続。
《王位継承発動》
スキル《英雄》を対象に付与します。
―error―
覚醒処理が重複しています。
―error―
処理が正常に実行出来ません
―erro
{{覚醒覚醒}}が{{完了完了}}しました。
―――――――――――――――――
世界の全てを知る者がいたとしても、この結果を導き出すことは困難であっただろう。
たとえ神という存在がいたとしても、予測は困難だったかもしれない。
それほどまでにあらゆる事象が複雑に絡み合い、もはや原型も分からぬ凄惨な被造物が産み落とされようとしていた。
――そして憎しみの卵は孵化する。
はたしてそれは母の愛だったのだろうか?
それとも母の狂気だったのだろうか?
通常ならばあり得ない現象が続き、世界の警告すらねじ伏せて己の意思を押し通す。
純粋であるが故に、それは決して止まることはない。
世界はいつも残酷だ。
それはいつだって彼女達を憎み、彼女達の不幸と絶望を願う。
だが同時に世界は平等でもあった。
だからこそ、全てを等しく地獄に突き落とすだけの力を彼女たちに与えたのだから……。
………
……
…
全てが終わった場所に、小さな影が二つ。
ゆっくりと起き上がり、夜空を見上げる。
それは新たなる生誕の祝福だった。
小さくか弱いただ庇護されるだけの存在から、自らの意思を突き通し己の憎しみを世界にばらまく存在へと生まれ変わった少女達への。
一度目の絶望で少女達は心を壊した。
そして二度目の絶望で少女達は……。
夜空には――巨大な月がただ静かに光り輝いていた。
=Message=============
※緊急通告※
世界に新たなる脅威が現出しました
【後悔の魔女エルフール姉妹】
~世界は私たちの事が大嫌いだから――
――私たちも世界の事が大嫌いなのです~
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