第19話

『和也君、どうしたのそれ』


当初の目的地である真紀の家に着いてすぐ、真紀のお母さんから心配を頂戴した。


「墓参りに行ったら、同い年くらいの男にいきなり殴られました……」


我ながら情けないやら腹立たしいやらで、有りのままを伝える。


『……もしかして』

「知ってる人ですか??」


──見せられた写真は中学の頃の真紀のクラスの集合写真だった。

この男の子じゃないか?と指差した場所には面影がある男の子が写っていた。


『彼、真紀のことを好きだったの』


殴られた時より、よほど痛かった。


『毎年墓参りにも必ず来てくれて』

「……花を供えてたのも彼ですか」


毎年墓参りに行くと真紀の好きだった花が供えてあったのは知っていた。

両親なんだろうと思っていた。

……真紀のことを好きな男子がいた。

真紀にも俺のように学校があり友人がいて、日々暮らしているのだから。

彼の好きな人を殺したのだ、殴られるくらいじゃ足りない。


『真紀、彼を振ったんですって。遠距離だけど大事な人がいるって。しつこく聞かれて名前だけ教えたって』


……だから名前を知っていたのか。

憎まれてたのか。恨まれてるのか。


『なぁ、和也君』


聞き役だった真紀のお父さんがいきなり…


『和也君、彼女はできたのかい?』


真紀のことを殺した俺がどうして彼女なんて作れる?それを真紀の親が聞いてきたのだ。


『墓参りはもちろん、毎年息子のようなキミに会えるのはすごく嬉しいよ?…ただ、もし真紀のことがあって前を向けないのであれば、それは違うよ』


……違わないです。貴方の娘を殺した俺は一生を費やしてでも償えないんです。

でも償わなきゃならないんです。


「……手紙、預かってもいいですか?」

『…あぁ、もちろんだよ』


質問にも諭しにも似た言葉を受け止めるでも打ち返すでもなく、かわすことしか出来ない俺はどう見えたのだろうか。


「ありがとうございます」

『またいつでも遊びに来ていいからね』


お辞儀をして帰路につく。


──列車で真紀の手紙を読もう。

真紀の居ない、真紀の居場所で手紙を読めるほど俺は強くないから。


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