『かいじゅう職場の怪』

やましん(テンパー)

  『かいじゅう職場の怪』

 男は、その日も上司や部下の訳のわからないいやがらせを受けていた。


 そこに、妖怪『ごたぶくれ』が入り込んだのである。


 この妖怪は、取りついた人間を、あたかもアドバルーンのように怪異な姿に膨らませて妖怪化させるのである。


 妖怪となった者は、次々に他の者を襲い、襲われた者は、やはり空気を満タンにされたような、コミカルな妖怪となり、ふわふわと、空を駆けめぐって、仲間を増やすのである。


 男は、この妖怪たちにも、例のジェット殺虫剤が効くことを見抜いた。


 ただし退治はできぬ。

 

 運が良ければ、退散させるか、または動きを止める程度の効果しかないが、怯んだ隙に逃げるいとまは出来る。


 男は、妖怪の巣窟と化した職場から、ある友人とともに、脱出を試みた。


 長い廊下で、妖怪化した、上司や部下に襲われながらも、ジェット殺虫剤のおかげで、なんとか外には出ることができたのである。


 しかし、すでにそこも、妖怪化した職場の人間達が待ち構えていた。


 ついに友人は、妖怪のえじきとなり、みるみる膨れ上がり、可愛らしい、アドバルーンのようになった。


 男は、殺虫剤片手に逃げる。


 が、辻辻に、コミカルな妖怪が立ちふさがり、なかなか、駐車場にまでたどり着かない。


 民家の中を通り抜けたりしながら、やっとのおもいで駐車場ビルにたどり着いた。


 しかし、その建物も、思わず笑ってしまうような妖怪たちに取り巻かれ、出口はすでに封鎖されていた。


 と、突然、その駐車場の、長く閉じられたシャッターの部分を突き破って、男の自動車が猛然と飛び出したのである。


 ふいをつかれた、妖怪となっていた上司などの群れは、四方に吹き飛ばされてしまった。


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 やがて、みな元の人間には戻ったが、長く後遺症が残ったのである。         


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 ただし、この男の行方は、そのあと、ようとしてわからなかったと云う。



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     出典『某やましんの悪夢譚』より

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『かいじゅう職場の怪』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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