欠落、そして消滅

篠宮

欠落、そして消滅

家に帰れば降り注ぐ罵声、暴力。それは全て俺へのもの。

壁や、床に飛び散る鮮血。それは全て俺のもの。

学校へ行けば、上履きの画鋲に始まり、机の落書きは勿論のこと、他にも陰口や暴言の数々。お昼なんて食べる時間は勿論無い。授業中は、当然分かるはずの無い問題を答えさせられる。体育は辛いなんて言葉じゃ語れない。

例え、血を吐いても止めることの許されない足。当然の事ながら、人間として扱われることなど無い。

放課後には同級生達に捕まり、空き教室で降り注がれる暴力の数々。

帰ろうとすれば門の前で待つ上級生。落ち着く暇も、ゆっくり息を吸う暇も与えてくれない。散々ボロボロにされた後はまた家に帰る。


「そんな人生…楽しいかい?」


1度だけそう聞かれたことがある。

その時俺はきっとこう答えた。


「さぁ。どうだろうね。」


曖昧に。でも実際そうだったのだ。楽しいという感情がきっと欠落しているのだろう、何が楽しいのか、何が楽しくないのかが分からなかった。


自分の部屋のベッドの上に横たわる。身体中が悲鳴を上げていた。もう、指もまともに動かない。…きっともう限界なんだろう。

そのまま俺は眠りについた。

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欠落、そして消滅 篠宮 @shino_27

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