第8話 旅日記の一ページ 7
「ふぬ......ハルトよ。いい加減離してはくれんかの? 」
その言葉にハルトは慌ててウルを抱きしめていた腕を離す。
だが、彼女の姿を見てハルトは一瞬で耳まで真っ赤に染める。
ウルの姿はまさに一糸纏わぬ姿だった。
昔のままならここまで緊張していないだろうが、ウルはなんと……成長していた。
昔は、歳は分からないが小さな少女だった。
もちろん服は着ていた。
だけど今は恐らく十五、六くらいの歳に成長し、バルンテール国の中でも見たことの無い、そうこれはいわゆる美少女というやつだ。
つまり……それほどの美少女が裸の姿で目の前に立っているのだ。
急いで視線を逸らすハルトを見てウルは腰に手を当て、ははーんと笑い、白い尻尾を揺らす。
「なんじゃー? 可愛い奴じゃの。」
と、ウルはハルトの頭を撫でる。
「どうだ。ほれ。見てみたいとは思わんのか? ククク……」
「早くなんとかしろ! 」
バカにしてくるウルにハルトは目線を合わせない様に、顔を真っ赤にして叫ぶ。
するとウルはクククと笑った後、しょうがないの、と呟き、指をパチンと鳴らす。
すると地面や焦げた家達が光の球に変わり徐々にウルの身体を包んでいく。
そして、ウルが尖った牙を見せながらニヤッと笑ったかと思うと光の球は弾け、程よい大きさの紺色の服へと変化し、さらに首の辺りに両端を留めるチェーンがついた黒のフード付きのローブを出現させ、自らに被せる。
ウルはその服をハルトに見せるようにふわりとローブを揺らしながら回る。
「見たか? これが我の力ぞ! 」
ウルはどうだと言う様に得意気にハルトを見て胸を張る。
ただの町でも見かけたような服装であるのに美しいその姿を見てハルトは唖然としていた。
「お前……変わったな……」
ハルトはウルの姿を正直に思ったことを言う。
子供、、というよりもう立派な女性だ。
「おぬしも変わったの……」
と、ウルは何処か悲しそうな目でハルトに抱きつき、ハルトの胸に顔を埋める。
今は耳は垂れ、ローブに隠れながらも少し見えている綺麗な純白の尻尾もしゅんと力なく垂れている。
「長い時間が過ぎ、おぬしも年老いた。」
「年老いたってなぁ......。俺はまだ20だ。」
「フッ……随分と身体付きもたくましくなったのぅ。」
ウルはハルトの腕や腹筋を優しくとろける様な喋り方で撫でる。
「!! ……ウ…ウル……」
ハルトの顔はまたも赤く染まっていく。
「随分と鍛えたであろうな。これなら馬から落ちても無事なのではないかや? 」
「そ、そうだな……仕事の都合上、随分と鍛えたからなぁ。」
「そうか……なら……」
そしてウルは言葉を止め、抱きしめる力を強くしたかと思うとそれは段々とハルトが身動きも出来ないほどの力で抱きしめる。
「……痛っ!… ウル? 」
と、次の瞬間、ウルはハルトの身体を抱いていた力を緩めハルトを解放する。
「うわ! 」
急に放されたハルトはよろけて後ろへと後ずさる。もう何か分からないハルトが、視線を戻すとそこにはニヤッと笑ってなにやら構えを取っているウルがいた。
「ふふ、ぶっ飛ばす。」
「は? ちょ、ウル?」
なにやら物騒な事を呟いと思うと、目にもつかない速度で駆け出し、後退したハルトの腹めがけ凄まじい飛び蹴りをかました。
「なぁぁぁぁぁああ?!」
ハルトはその桁外れの威力の攻撃に紙の様に数十mの距離を一瞬で吹き飛ばされ、何が起こったのか分からないまま灰とススで汚れた土に叩きつけられる。
「なん……なん……だ。」
もくわけが分からないと、ハルトはそのままな気を失った。
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