第2話 旅日記の一ページ 1
(彼女の名は…………。)
「………ト! ……ルト! 」
誰かが何か叫んでいる。
野太い、荒い声だ。
この声のせいで折角のいい夢が台無しだ。
「……ハルト! 」
「 ! ? 」
その声が自分の名前を呼んでいるものだと気づき、青年、ハルトはゆっくりと目を開ける。
「やっと起きたか……お前さん、話は聞いとったか? 」
ハルトは目をこすって辺りを確認する。
「酒をたらふく飲んだかと思ったら次は寝に入りおってからに……。次呼んで起きなんだら通りに投げ捨てようかと思っとったわい。」
その話を聞いて、あぁそうか、とハルトは頭を抑える。
ここは北国バルンテールにある酒場の一つ。
ハルトはある女性との縁談が……まぁ、破断になったので、ここで酔い潰れていたのだ。
そして今、この酒場の亭主と話ている途中で寝てしまったのを起こしてもらったと言うわけである。
「……はぁ……どうやら寝ていたみたいだ。……すみませんが、その話ってのをもう一度お聞かせ願えますか? 」
「はぁ……。やれやれ、ま、『助け人 ハルト』の願いとあっちゃ聞くしかないわな。」
亭主は冗談交じりにそう言う。
「それはありがとうございます。」
ハルトは軽くそう笑顔で座ったまま会釈すると、酔い覚ましに水を一杯飲み、次は寝まいと真剣に聞き耳をたてる。
彼の名前は『ハルト・ローエン』。白いシャツに外套というスタイルが彼のいつもの格好だ。そして、その内側にちらっと見える質の良い革製のベストが彼のお気に入りであり、ちょっとした自慢の一品でもある。
髪は程よい長さの金髪で、目は青色。背はまぁまぁ大きく、身体付きも引き締まっていてハルト自身も身体については不満はない。
そして、先程亭主が言った、『助け人』とは、ハルトの職業というか仕事である。
『依頼があればどんな仕事でも受け負いその仕事分の給料を得る』というごく簡単なものなのだが、ハルトは持ち前の体力と気前でここらでは評判も信頼度もまぁ高い。
この亭主も、ハルトには幾度か仕事を依頼したことがあるということだ。
「それがな、、、」
一拍したところで亭主はそう切り出した。
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