レビュータイトルの通りです。主人公はある夜 拉致され監禁されます。そして目隠しされたまま、手に入ったナイフを振り回すうちに1人を刺してしまう。
目隠しを外すと、そこでは自分が刺した他にも2人が倒れていました。
スピーカーから声が流れてきて、「その3人のうちあなたが殺したのは1人。それを推理し当てて、その人の持っている鍵を使って出て行きな」といったようなことを言います。
ものすんごく頭を使って読みました。
が、ミステリー作品の答えに私が辿り着けるはずもなく。
ですが「誰を刺したか」という謎は極端に難しいものではなく、落ち着いてちゃんと考えればわかりそうなものです。
「ほえ〜」と声が出そうになりました。いつまでも考えてしまうような、ずっしりとした余韻の残る とても面白い作品です。ぜひ謎解きも楽しんでいただきたいです。
残業を終えての帰路、“俺”は見知らぬ2人組に拉致されて意識を失った。目が醒めるとそこは暗闇で、彼は拉致犯と思しき3人の内のひとりをナイフで刺してしまう。そうしてまたも気絶し再び目覚めれば、部屋の内に3体の死体が転がっていて――機械越しに謎の人物が語る。ここから出たければ自分が誰を殺したのかを特定しなければならない。
わけもわからず拉致され、正当防衛で刺してしまった犯人を特定させられる。不幸が過ぎるというものですが、そのひとり以外はそれぞれ別の誰かが殺したものである点……3人の関係性が謎を解く鍵となる構造、ここにフーダニットの真髄が埋められている点こそ本作の肝なのです。
読者は“俺”が拉致される際に聞いた3人の会話や、死体の位置関係、記憶……まさに“俺”が得られるヒントだけを頼りに謎へ挑むこととなります。出題者との真っ向勝負というミステリーの醍醐味をかくも濃やかに味わえる楽しみ、格別ですよねぇ。
さて、あなたは提示されたヒントから正解を弾き出せるでしょうか? ぜひ挑戦していただけましたら。
(「ダニットという謎」4選/文=髙橋剛)