きみのこえがきこえる

ささたけ はじめ

愛機爆誕

【助走】起こすは行動 走るは国道

 俺の名前は佐竹さたけ絃夜いとや。とある田舎の大学生二年生だ。

 ささたけ? そんな奴は知らないな。

 人違いなら他を当たってくれ。




   *




 開幕早々、私的な話題で恐縮だが――俺はこれまで女性と付き合ったことがない。あと三十分ほどでやってくる六月一日の誕生日をもって、二十歳ハタチにもなるというのに、だ。

 二十歳といえば社会的には立派な成人である。

 よわいが二十を数えると酒やたばこが解禁され、親の同意なく結婚ができるようになる。なんなら養子だって迎えられる。それが成人ハタチというものだ。

 とはいえ。


 肝心のパートナーがいないのでは、どうしようもないじゃないか。


 あらかじめ断っておくが、別に異性との交際経験がないことを恥じているわけでもなければ、決して馬鹿にしているわけでもない。単純に、人間ホモサピエンスに本来備わった未知の体験を求める習性に従って、そろそろ一度くらいは恋愛というものに向き合ってみようと思ったのである。建前や強がりではないので邪推してはいけない。


 それはさておき。


 とにもかくにも俺は、今の自分にできる最大限の努力をすることにした。具体的には――大学の友人によると――なんでも俺のアパートの近所には恋愛成就の神様がいるらしいので、さっそくお参りをしてみることにしたのである。


 ――つまりはである。

 笑わば笑え。


 ところで、「くだらない告白をしているくらいなら、身近な女性に告白をしろ」と思ったそこのあなた。




 大きなお世話だ。




 ――失礼、間違えた。

 勘違いしないで欲しい。


 俺には告白する勇気がないわけではない。

 告白する相手がいないだけなのだ。

 だからこそ――俺は恋愛成就の神様に、一期一会な合縁奇縁を千載一遇の一蓮托生として求めに行く決意をしたというわけだ。何を言っているのかは俺にもよく分からなくなってきたが、ともあれ――これから語る内容は、その神が俺にもたらした奇妙な出会いの物語ストーリーである。

 アクセル全開フルスロットルで進めていくから、二人乗りタンデムでちゃんとしがみついとけよ。




 原付だけどな。

(筆者注:原動機付自転車での二人乗りは法律で禁止されています)

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