#オカ魔王と勇者とポテサラと

うゆま@豆腐卿

冒険の書-1-

1


「魔王、今度こそ倒す!」

「あーら、勇者チャン!待ってたわー、ささ、座って~」

「あ、ども…」

「ハイ、お通しのポテトサラダ~♪」

「…いただきます…相変わらず美味いよな…これ」

「ちゃんとお酢を使ってるからねー、オスだけにー」

「オカ魔王の渾身ギャグゥ…!」

「今日の注文は?」


2


「戦う、そしてお前を倒して世界を救う」

「フー!それでこそよ、勇者ちゃん!

 じゃぁバトルフィールドはあちらよー。料金は前払いね。

 一時間3000Gよ~」

「クソ、相変わらず高いな!聞いた事無いぜ、魔王と戦うのに金がいるって!」

「ここはアタシのお城だもの、お店にしたっていーじゃない?」


3


【ゆうしゃ は まけてしまった !】

「…つ、強えぇ…」

「そんなんじゃ、カラオケのデュエットにも着いて来れないわねェ?

 勇者ちゃん?あ、お疲れのお水ね~」

「く、勇者と魔王のLOVEゲームじゃねーんだぞ!

 ぐびっ!生き返る…」

「世界樹の水は最高でしょ?」

「…いくら?」

「1万G♪」


4


「…帰るわ」

「あら、もうお帰り~?」

「明日こそは!絶対に!お前を!倒すからな!

 あ、ポテサラ持ち帰りOK?」

「楽しみにしてるわ~。あ、ポテサラは無料でいいわよ~。

 はい、タッパー。洗って返してね~!」

「勇者の剣つけて返してやるわ!ごちそうさま!」

「ばいびー☆またきてねー♪」


#オカ魔王と勇者とポテサラと


オカ魔王:強い肉体を誇る魔王

     ポテサラが得意料理

     秘密は絶妙なお酢加減


勇者:王からの出張命令で

   魔王と戦うも連敗が続く派遣社員的勇者


ポテサラ:ジャガイモやや多めで

     お酢をちゃんと入れており美味い


5


「おらー、こんばんはー!魔王、今度こそ倒しに来た!」

「「「「いらっしゃ~~~ぃん」」」」

「オカ魔王四天王だと!?クソッ今日は四天王Day!?」

「残念!ママは今日は他の魔王様と会合よ」

「大丈夫、我等がもてなしてやるわ…!」

「さ、ポテサラあるわよー」

「あ、どもっす」

「何飲む~?」


6


「地底魔王ビール」

「好きねー勇者ちゃん、地底モノ」

「安定した美味さがあって好きだわ…あー、生きてる!

 ってちゃうわー!魔王がいないならお前等と戦う!覚悟しろ!」

「決戦入りました~!フー☆」

「誰をご指名?」

「全員じゃ!魔王倒すにはそれくらいしなきゃな!」

「1万2千Gになりま~す」


7


【ゆうしゃ は まけてしまった !】

「やっぱ仲間いないと回復しか出来ねぇ…っ!」

「はーい、おつかれさまー!

 もうちょっと押し押しでも良かったのに~」

「はい、お水~」

「ぐっびっ!生き返る…ハッ!」

「世界樹の水、高級ラベルよ~」

「おいくら?」

「2万Gのところ1万5千Gに割引~!」


8


「今日も負けた…財布的にも負けた…

 なにより水を普通に飲んでしまった…」

「だがHP/MP/バッドステータスすべて回復のすぐれもの…

 当然の値段よ…」

「ほんとどこで買えるのコレ!?教えてよ!?

 非売品で入手できないって言われるの、これ!」

「あら?うちのお店の裏の隠し迷宮に売ってるわよ~?」


9


「ふふ、イイ事を聞いたぜ…!」

「でも魔王様1回倒さないと入れないわよ~?」

「…サラバ、ぼろ儲け裏技」

「その前にちゃんと強くなってきなさいな」

「そうだ、地道に強くならなければ、

 肉体と精神は追いついて来ないぞ!」

「くそ、何で四天王にお説教されながら、

 オツマミ美味しいの!?」


10


「あ、そだそだ。

 魔王様から、ハイ、来たら渡してって伝言♪」

「…ポテサラ?

 だけじゃない、保存の効くオツマミ…!」

「ちゃんと食べてるか心配してたわよ~?」

「食を正さねば健全で我好みの肉体にはならぬ…!」

「ア、ハイ、タダシクシマス…

 じゃぁ、帰る。これ、タッパー、魔王に」

「はーい」


11


「じゃぁ近くの最前線の、

 屈強な村人がいる村まで送るわよー?」

「…いや、帰り道でちょっとレベル上げしていくからいいわ。

 じゃ、魔王によろしく」

「きをつけてねー」

「次来る時はお仲間やお友達も連れてきてねー?」

「こねーよ!みんな忙しくてこんな僻地までこねーよ!」

「勇者、暇なのね…」


#オカ魔王と勇者とポテサラと

オカ魔王四天王:屈強、乙女、愛嬌、冷静、

        という属性で構成された魔王四天王


勇者:最近、仲間が本業が忙しく、ソロプレイで魔王討伐中。

   ザコの100群れ程度なら片手一つで吹き飛ばすが、

   魔王にはやはり勝てない


ポテサラ:肉がたまにベーコンだったりウィンナーだったり


12


「うーっす」

「あら、勇者チャン、いらっしゃーい。

 ってアレ?今日はオフ?」

「ああ、つーか、

 勇者から転職しようかなって、さ」

「…何があった…座りな。

 これはアタシの奢り。世界樹5年モノよ」

「…ありがとう。昨日さ、王様にさ…

 魔王を倒す気あるのかって仲間とか皆の前で怒鳴られてさ…」


13


「…人前で叱るなど、上に立つ者がやってはいけない事…

 勇者チャン、あなたは悪くないわ」

「オカ魔王…」

「アタシの若い頃を思い出すわ…

 前代魔王からこのお店を受け継いだとき…」

「いや、これ城だろ、ねぇ?」

「まだ肉体以外は弱かったアタシは、

 前の魔王の家臣達に虐められて…辛かったわ」


14


「意外だな…肉体のところ以外は」

「こう見えても、最初は特殊攻撃技もないわ、

 バッドステータス耐性もまだ無くて…

 嫌味も散々言われたわ」

「どこも大変なんだな」

「相談出来る人もいなかったし、

 ほんと第二変身して逃げたかったわ…

 でもその時は出来なかったけど」

「え、今は変身出来るのマジ?」


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「…でもね、その時、

 すっごく優しい最弱レベルの魔王チャンがいてね。

 こう言ってくれたの。

 どんなに弱くても自分の強みで1ターンでカタをつければ

 相手も文句は言わないって」

「その魔王、余計な事を…!」

「アタシより弱いのに、

 ほんと強い鋼の意志を持ってたわ…

 今は、魔王業で忙しいみたい」


16


「その次の日、また虐められそうになって、

 ほんとは一番使いたくなかった肉体で反撃してみたの…

 1ターンどころか相手はセットアップで即死したわ。

 その時から周りはアタシの事認めてくれて…」

「セットアップで複数行動するなよ反則だわ…

 勝てんわ!てかよくそれまで肉体で反撃しなかったな…」


17


「アタシ、ほんとは魅力とか社会で

 魔王として君臨したかったの。

 小さい頃から触れるだけで触る者皆、

 防御ダウンの後に大ダメージで殆ど死んじゃうから…」

「そんな手でポテサラになるだけで済むジャガイモ強えぇ…」

「お料理する時は手加減してるわよ~!失礼ね~!」

「…大変なんだな、そっちも」


18


「ふふふ、恥ずかしい過去を聞かせちゃった」

「…そっか、自分の強みで勝負しろってか。

 もう少し、頑張るかな」

「その意気!で、今日は戦わないの?」

「今日はただの客だよ。

 カラオケ、いい?」

「何歌う?」

「勇者は辛いよ」

「は~い!

 カラオケはいりまーす!」

「ポテサラ、用意しておいて」


#オカ魔王と勇者とポテサラと


オカ魔王:若い時は前の魔王の家臣に

     何かと虐められたが、

     一撃必殺を決めて周囲を

     認めさせた過去がある


勇者:世界樹の水が心に癒しをもたらしてくれるので

   魔王経由で通販で定期購入を決めている


ポテサラ:魔王の防御力ダウンは効かない


最弱魔王:どこの誰だろう…?


世界樹の水:意外と原価は安い


19


「ちーっす、裏洞窟の水屋っす」

「あーら、世界樹の水精霊さん、

 いつもお疲れ様」

「伝票はコレっす。

 あ、ハンコか魔王印で」

「いつもありがとー。

 勇者チャン、すっかり気に入って、

 通販で定期契約してくれてるわ」

「いやー、表じゃ非売品で、

 不当な価格で売られてますからね。

 定期なら格安っすよね!」


20


「お酒にすっごくあうし、

 お料理にもすっごく使いやすいのよね~」

「あー、分かります。

 やっぱ、そう言う事にもつかって欲しいっすわ。

 勿体無いアイテムランク上位のお陰で

 いざ使う時に賞味期限切れちゃうとか、

 マジないっすわ」

「ねー。

 毎日飲んで美容にいいし、

 魔力枯渇とか無くて助かっちゃう」

「良かったすー」


21


「あ、そうそう。世界樹さんはおげんこ?」

「以前に魔王の姐さんに頂いた

 腐竜のコヤシで良くなったす~。

 あれ、効きますね」

「あれ、勇者チャンに頼んだの。

 一人で5体くらい倒したって。ほんと、強いのよー」

「うへぇ、あの腐竜をっすかー!マジぱねぇっす!」

「でも、まだちょっと心がね~」


22


「あ、魔王の姐さん、

 まーた若い子見るとお節介モードになっちゃうっすねー」

「だって、放っておけないじゃない?

 一生懸命、私に戦いを挑みにくるんですもの~」

「確か結構な金額とってましたっすよね?」

「ウチはお店だし~」

「かつては万魔迷宮と言われた城が、

 今や扉開けたら即、魔王っすものね」


23


「お客さんはもてなさなきゃ失礼でしょ~?」

「はは、魔王の姐さんは、変わってっすね。

 おっと、そろそろ裏に戻りますわ~!」

「おつかれちゃーん。

 じゃぁ来週もシクヨロー!」

「どもっすー」

「さーて、そろそろお店開けなきゃ。

 世界樹のお水もポテサラも仕込みOK、

 勇者チャン、来るかしらね~?」


#オカ魔王と勇者とポテサラと


オカ魔王:何かと一生懸命になる若者を

     放っておけないお節介タイプ&物理タイプ


世界樹の水精霊:以前はイメージのせいで水が売れず

        細々と仕事をしてたが、

        オカ魔王のおかげで水の通販に成功し

        今や営業はグングン成長中


ポテサラ:今日はマスタードと胡椒でピリっと仕上げ


勇者:世界樹の水で炊いた米が美味しく炊けてショック

   今までの努力が無駄だったと悟るも

   ご飯が美味しくてどうでもよくなる

   ちなみに今日も負ける


続く?

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