屋上の情報屋

@mikeneko72

プロローグ

「ただいまー。」


俺がいつも通り妹の小春とリビングでテレビをみていると兄さんが帰ってきた。


「おかえりー。」

「おかえり、お兄ちゃん。」


そして兄さんが俺と小春の間に座り、いつも通り一緒にテレビを見た。


いつも通りの幸せな時間だった。




あの電話がかかって来るまでは。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


それは俺らがご飯を食べ終わってリビングでダラダラしていた時に起こった。

俺たちは兄さんの影響で兄妹全員がオタクだったから、みんなで溜まった深夜アニメを見ていると、不意に電話が鳴り始めたのだ。


そしてその電話に料理中だった母さんが包丁を持ったままでた。


「はい。こんばんは。どなたでしょうか?えっ?はい。確かになりましたが・・・。えっ!?夜逃げ!?じゃあ家がその借金を!?その、それはいくら程で・・・。9000万!?そんな大金を払う余裕はありません!家には3人も子供がいるんですよ!?そんな・・・はい・・・。分かりました・・・。」


どうやら電話の様子だとただ事ではないようだ。

それを心配した兄さんが、


「母さん。どうかしたの?」


と聞いたすると母さんはゆっくり振り向きながらボソッと、


「・・・あなた達がいなければ・・・」


と言った。


そして次の瞬間、母さんが兄さんの腕に包丁を切りつけた。


「っ!!痛っ!」


そこで父さんが、俺らと母さんの間に入って、


「おい!お前!何をやっているん

だ!」


と言った。


そして俺の視界が真っ赤に染まった。


俺は状況が飲み込めずに父さんの首筋を切って歩いて来る母さんを血で赤に染まった視界で呆然と見ることしかできなかった。


そして母さんが今度は、


「あなた達がいなければぁぁぁ!」


と叫びながら、俺と小春におそいかかった。

俺は小春の手を握り、覆い被さることしかできなかった。

そして俺の首に包丁が当たる寸前、俺の右手が引っ張られた。


兄さんだった。


腕を切られた兄さんがそれでも俺を助けてくれたのだ。

そして俺と小春は兄さんの部屋に連れていかれ、そこで全員カッターナイフを持って兄さんの腕に服の布を巻きつけて扉に鍵をかけた。


「いいか。俺らの母さんはもう母さんじゃないと思え。部屋に入って来たら、俺が最初に飛びかかる。そこでケリをつけるが、もし俺がやられたら、その時はお前が小春を守ってやれ。頼んだぞ。」


と言いながら兄さんは俺の肩を叩いた。

俺は頷いた。そして、なんとしてでも後ろで泣いている小春を守らなければという使命感が湧いて来て、少しだけ俺の恐怖を消してくれた。


そしてついに母さんが扉の前にやって来て、


「ねぇ。開けて?ちょっとだけ開けてくれるだけでいいんだよ?」


といつもの母さんの声で言った。

それはまるで今までの悲劇が夢だったかな?と思うほどいつもの声だった。

しかし俺らが無言でいるといきなり扉から包丁が飛び出して来た。そして、それが引っ込んだかと思うとまた突き刺して来て、それをどんどん速くしながら、何回も何回も突き刺してきた。

そしてとうとう、扉が壊れて母さんが入って来た。


「オラァァァ!」


兄さんがすぐさま飛びかかったが、そんな兄さんの横顔に一瞬迷いが走った。その瞬間、兄さんの首から血が溢れ、崩れ落ちた。

そしてゆっくり母さんがこっちを向いた。そしてまだ少し息がある兄さんを跨いでこっちにやって来た。

俺は恐怖で足がすくんで動けなかった。

そのとき俺の服の袖が少し引っ張られた。小春だ。それで俺は我に帰った。


そうだ。小春を守らなければ。兄さんと約束しただろ!


そして俺は実の母親である人に向けてカッターナイフを振るい、首を掻き切った。

そして母さんは兄さんと同じように首から血を流しながら崩れ落ちた。


「兄さん!」



俺はすぐさま兄さんのところに行き、兄さんの脈を測った。


まだ生きてる!


俺は救急車を呼ぼうと携帯を手に取ろうとした手を誰かが掴んだ。


兄さんの手だった。


「ごめんなぁ。ごめんなぁ。こんな不甲斐ない兄貴で。」


兄さんは血だらけの顔で泣きながらそう言った。


「そんなことない!だからもう喋るな!」


泣きながら俺は兄さんに言った。

しかし兄さんは俺の頬を撫でながら、


「俺はどの道助からない。だから最後の俺のお願い、聞いてくれるか?」


そして俺は、今の言葉で察した。兄さんはもう助からないだろうと。だから俺は頷いた。

そして兄さんも頷きながらこう言った。


「小春のことを、頼んだぞ。」


それだけ言うと兄さんは目を閉じてしまった。

俺の頬に触れていた手の力が抜けて、俺の手をすり抜けて行った。


「兄さぁぁぁぁぁぁぁぁん!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺はそこで目を覚ました。


どうやら昔の夢を見ていたようだ。


俺はさっきまで『コール オブ ◯ューティ』をやっていた、Play◯tation vitaの画面に目を向けた。


そこには「Dead」の文字が表示されていた。








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