第7話中世異世界転生・其の4

「それにしても、お父様ったら、今どき親の決めた相手と結婚しろだなんて。いったいいつの時代の人間なのよ」


 さっきからインさんは、自分のお父さんの文句ばっかり言っている。いつの時代と言われても、少なくとも現代日本でないことだけは確かである。


「ああ、それより、説明がまだだったわね、タロウ。わたし、お父様に無理やり結婚させられようとしているのよ。で、それがどうしてもいやで、タロウに結婚相手のふりをしてもらったってわけ。言っとくけど、ふりだからね、勘違いしないでよ」

「そうですか、わかりました、インさん」


 俺はそう言って、インさんに適当にあいづちをうつ。まあ、インさんとお父さんの話の流れからして、そうではないかと思っていたが。


「それで、ここはどこなの、インさん」


 インさんの事情はわかったが、あの後インさんに連れてこられたこの場所がどこなのかは、さっぱりわからない。正確に言えば、この異世界自体、どこだかわからないのだが、そんなことをインさんに言ってもしょうがないだろう。


「ああ、そうだったわね。タロウをこんなところまで連れてこさせといて、場所の説明もまだだったわね。ここは神殿よ。我が家の家訓で、結婚する二人はこの神殿にあるしるしを取ってくることになってるの」

「ふうん、二人でねえ」


 インさんに連れてこられた神殿とやらは、ギリシャのパルテノン神殿みたいな感じだ。現代では有名な観光地で、大勢の見物客がいるらしいが、今この場所には俺とインさんの二人だけである。


「あっ、タロウ。そこ、段差あるから気を付けてね」

「えっ、段差? どこどこ? わっ」


 そうインさんが注意してくれたにもかかわらず、俺は段差に引っかかって転んでしまう。神殿の硬そうな石畳の床に転んでしまうのだから、さぞかし痛いだろうと思ったが、そんなことはなかった。かわりに何か柔らかい感触が、俺の両手にするのだった。


「きゃっ、タロウ、どこ触ってるのよ。離しってったら」

「わあっ、インさん。ごめんなさい、俺ったらなんてことを」


 俺は転んだ時に、インさんを巻き込んでしまっていたようだ。結果として、俺がインさんを押し倒した形になってしまった。しかも、俺の両手がインさんの大きいおっぱいを、二つとももんでしまっている。


 これはまずい。今すぐ起き上がらなければ。しかし、俺は慌ててしまい、うまく立ち上がることができない。俺がやっていることと言えば、押し倒したインさんの体の上でもぞもぞするくらいだ。


「いい加減にしてってば、タロウ。誰かに見られたらどうするの」

「すいません、申し訳ありません、失礼しました」

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