第5話 カナエ

 次の日少し目が腫れていた。

 自分ではほとんど泣いているつもりはなく、あれは虚無感に近い感覚だったと思っていた。

 普通にごまかせる程度でホッとした。

 なにか重たい気持ちでいつも通り学校に行き、友達と普通に笑える自分にほんの少しの気持ち悪さや虚しさを感じる。


「大丈夫?」


 カナエが二人きりになったタイミングでポンっと肩を叩いてきいてくる。

 中学も一緒で、カナエがいいのであれば親友と呼びたい唯一の私の友達。

「何が?」

「元気ないじゃん」

 カナエのショートヘアーがすっと揺れ顔を下から覗き込むように見つめられる。

 普段通り過ごせれてると思っていたが、バレてたか。

 気づいてくれたことに喜びも感じている私もいる。


「マサキと別れた」


 初めて口に出す。

 悲しい気持ちになると思って口に出すのを避けていたがなぜか少し心が軽くなった気がする。


「え?初知りなんだけど、なんで?」


「初めていったからね、まあ、向こうが別れよっていってきたから」


「そっか、ドンマイ」


 お尻を叩かれる。

 あっさりしているな相変わらず。

 深く聞いてこないのは私の元気がなかったから、気を使ってって言うのも、もしかしたら多少はあるかもだけど……

 おそらくただ単に興味がないのだろう。

 カナエは自分の興味あることなら一直線に聞いてくるタイプだし……

 もちろん私から話したら親身に聞いてくれる。

 ただ私も特に話す言葉が湧かないので色々聞かれないのは助かる。


「ありがと」


「これで私と遊べる日が増えるね、今日とか空いてる?」


 今日はバイトか、でも正直、朝から行く気にならないというか、あんまり行きたくないんだよな


「何?行きたいカフェでもあるの?」


 ここ3ヶ月ほどカナエのカフェ巡りブームは続いている。

 私もよく連れられていっているので私のプチ趣味みたいになってる気もするが、私はカナエに連れられてじゃないとあまり行く気にならないだろうなと思う。


「そう、少し離れてて電車で行くんだけどね」


 どうやら近辺のカフェは制覇したようだ。


「どうしよっかな」


 バイト休もうかな……


「行く?」


「……うん、行く」


 1日ぐらい大丈夫か、風邪とかテキトーに理由つけて今日は休もう。

 なにげにバイトサボるのは初めてだな。

 休むって決めたらまた少しスッキリする。

 今日の気持ちの淀みはバイトに行きたくないって気持ちもあったんだななんて一瞬思う。

 青い空が窓から移り雲が風に流されるように私の心から淀みは消えて行く。

 

 今日のカフェはどんなところで、何がオススメなんだろうな。カナエはどうせ


「着いてからのお楽しみ」


 って、いつも通り教えてくれないだろうな。

 まあそれが楽しかったりするんだけどね。

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