第4話 苦味
「……なんで?」
わかんない
色々な疑問が胸の中で大きく膨らみ、口から小さく溢れる。
コーヒーを持つ手から温かみが消えた気がする。
「セナも別に俺のことが好きみたいな感じじゃ無いし、俺もなんか違うなって思ったら冷めちゃって」
強くまだあったかいコーヒーの入ったコップを持ち直す。
「……わかった、いいよ」
私の意思とは関係なくぽろっと口から出た
「ありがと、ごめん」
「うん、今日は帰って……」
「わかったごめんな、ありがとう」
そういうとマサキはドリンクを手に取り席を去ってくれた。
ほんとは全然わかってない、わかんないし、全然、良くも無い。
言葉って大事な時に出てこない。
付き合い始めた頃は、別にそこまで好きじゃなかったけど、、、
一緒にいるうちにちゃんと好きになっていたんだ
頬を流れるものにそんなことを心で叫んだ。
しばらく机に突っ伏していた
気持ちが落ち着いて、顔を上げるとフードコートは混み始めたのか、たくさんの足が行き来する。
通り過ぎる足たちは自分のことをどういう目で見ているのかな?
いや見られてすらいないのかな?
見て一瞬何か思ったところですぐに記憶から消えるのだろう。
そんことが頭をよぎってすぐにどうでもよくなる。
冷めたコーヒーを口いっぱいに流し込む
「苦い」
余ったコーヒーに砂糖とミルクを二つとも入れ、一気に飲み込む
「甘い」
甘すぎる……
空になったカップを捨て歩く。
いつのまにか自分の部屋に着き、枕に顔をうずめていた。
なにほんと……意味わかんない。
なんで、、どうしてなの?
いつから何が嫌で別れたかったの?
いつからあいつの気持ちは冷めていたのか、前のデートの時?
それとも、もっと前?
考えても答えはマサキにしかわからないし、もしわかったところでどうしようもない。
そんなことわかっているのに頭の中でそんな問いが回り続ける。
わかんないよ……
振られたとかそれよりも、はっきりできない自分に涙が出る。
悲しいというよりは悔しさのような、心の奥にぐしゃぐしゃに書き殴った感情が居座っている。
この感情はしばらく残るんだろうな。
今日はもう何も考えたくないな。
時計の秒針の動きが耳に響く。
布団を抱きしめ、ぎゅっと目を閉じた。
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