第24話 シェインヒールの女神と地球の女神

 最近、ヴィアンテ様の様子がおかしい。


 簡単に言うとイライラしている。


 ブルウッドから戻って3日、俺の『御鎮法おちんぽう』の訓練は完全に俺任せで、仕方ないので自主トレに励むしかなかった。


 その日の夕方、そろそろ夕食の時刻だとラマニアが俺を呼びに来た時に騒ぎは起きた。


 と言うか、ヴィアンテ様が騒ぎ出した。



「あーーーーっ、もう腹立つぅ!!何なんだ、あやつのあの態度は!?こっちが下手したてに出てやりゃ頭に乗りやがって!!これだから堅物処女かたぶつしょじょは手に負えんわ、まったく!!!!」



 とても女神らしからぬ口調でキレ始めるヴィアンテ様。


 その出現場所は俺の左肩だから、たまったもんじゃない。



「一体どうしたんですか?ヴィアンテ様。最近特にイライラしてたみたいですけど」


「どうもこうもあるかぁっ!!お前んところのドぐされ女神の事じゃあっ!!とても女神とは思えぬ高慢コーマンさと口の悪さよ!!思い出しただけで腹が立つ!!」



 今のヴィアンテ様の口調も大概だと思ったが、火に油を注ぐだけだと思い、黙っておく事にした。


 要するにヴィアンテ様は俺の世界の女神様と何らかの交渉をしていたらしい。


 先日のブルウッドからの帰りの時に聞いた話から察するに、おそらく勇者召喚に関する事で間違いないとは思う。


 俺とラマニアは直接その現場を見たわけじゃ無いし、俺の世界の女神様とやらの声も外見もわからないので、ここから先はヴィアンテ様の話を元にしたイメージである。




【ヴィアンテ様の回想】



「お久しぶりでございます。地球の女神、モスティレア様」


「おや、これはシェインヒールの女神、ヴィアンテ様。ご機嫌麗きげんうるわしゅう」


此度こたびはモスティレア様にご相談致したい旨がございまして、お呼び掛けさせて頂きました」


「はて?私にどのような」


「ご存知かとは思いますが、私の世界では時折『しき炎』が現れ、危機に晒されます。その際にはモスティレア様の世界より『鎮火の勇者』の力をもつ者を召喚させて頂いております」


「ええ、そういう取り決めでございましたね」


「今回もそちらの世界から一人、召喚させて頂いたわけですが、このままですと『炎』に対する防衛が完全とは言えません」


「つまり、一人では人手が足りていないという事ですね?」


「はい」


「事情はわかりました。ですが、私にはどうする事もできません。ヴィアンテ様こそご存知かと思いますが、そちらの世界で起こる『炎』とやらを鎮火できる素質をもつ者、その選定は私にはできないのです。逆に、貴女あなたが私の世界から素質のある者を見出だしたなら、自由に召喚して良いと、そういうお約束でしたでしょう?わざわざこのような伺いを立てずとも、今まで通りご自由に召喚して頂いて良いのですよ」


「仰る通りなのですが……此度こたび何故なにゆえか、一人しか鎮火の勇者を見つける事ができなかったのです」


「それは………まぁ心中お察しはしますが、だからと言って私にできる事は何も………」


「いえ、そこで私がご相談したいのは、この『勇者が見つからない原因』について、モスティレア様に何かお心当たりは無いかという事なのです」


「ヴィアンテ様が勇者を見つけられない原因………ですか」


「はい。今回勇者を召喚するにあたり、モスティレア様の世界を探知させて頂いたのですが、何らかの大きな力に阻まれ充分な探知ができなかった……そのような感覚を味わったのです」


「ヴィアンテ様の探知を妨害する者がいたと?」


「人かもしれませんし、または人ではない何らかの事象、意志、歪みなどかもしれません」


「なるほど………仰る事は理解しましたが、やはり私には………」


「そう………ですか」


「ただ、今のヴィアンテ様のお話を聞いていて、あるいはという仮定の話なのですが……」


「!な、何でございましょう!?」


「もしかしたらそれは………私の世界を構成する『意志の力』が、ヴィアンテ様の世界を拒絶しているのではないでしょうか?」


「モスティレア様の世界が私の世界を拒絶………?」


「ええ。私もうろ覚えなのですが、たしか貴女あなたの世界の『鎮火の儀式』というのはあの………少々お下品な行為でございましょう?」


「下品………?」


「そうです。まるでその………男女の営みを模したかのような、破廉恥ハレンチきわまりないお下劣な行為。それを私の世界が無意識に拒絶しているのでは?と、思いまして」


破廉恥ハレンチ?お下劣?お言葉ですがモスティレア様、男女の営みは太古の昔から愛と生命をはぐくむ聖なる行為です。それを否定するなど、とても女神の発言とは思えません!」


「まあ!?私が間違っていると!?」


「この件に関しては譲る気はありません!性交渉セックスは愛と生命の象徴、そしてそれを模した聖交渉セクルスもまた神聖なる行為です!……まぁ、お堅い考えが災いして、未だに未経験のモスティレア様には少々、刺激が強すぎるのかもしれませんが」


「な、な、な、何と失礼な!!貴女あなたのような年中発情している下品な女神の世界など、滅びてしまえばよいのです!!」


「誰が発情女神よ!!男の●●●に●●を●●●●されるよろこびも知らない堅物処女かたぶつしょじょに言われたかないわ!!」


「しょっ………!も、もういっぺん言ってみなさいよ、このビッチアンテ!!」


「ビッチ言うな!!この未使用●●●!!」




【回想終わり】




「………………」


「………………」



 この、およそ女神とは思えない低レベルな喧嘩の詳細を聞かされた俺とラマニアの気持ちはどこにもっていけばいいのか。


 最初の感想がそれだった。

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