第4話 はじめての行為

「ここが現場か」



 俺の『スペルマップ』を見てラマニアが道案内してくれた。


 さすがにこの国の初心者の俺が地図を見ても全くわからない。


 そして辿り着いた場所は、『宿屋』とのことだった。


 俺のイメージする異世界の宿屋って感じじゃなく、なんていうかビジネスホテルのような外観だった。


 と言うか、街の雰囲気は全体的に俺の世界の日本に近い。


 そのせいで俺の中の『異世界観』は早くも崩壊しているわけで。



「それではリン様、中へ入りましょう」


「わ、わかった!」



 意を決して中に入る俺達。


 何気に自動ドアなのが緊張感をそがれるが。



「いらっしゃ……って、ラマニア殿下でんか!?」



 カウンターでやる気なさげに座っていたオッサンの目が見開かれる。


 そりゃそうか、突然お姫様が入ってきたら驚くのも無理はない。



「突然で申し訳ありません。この宿に『炎』の反応が出ているのです」


「なんですと!?ど、道理でここ数日、やけに暑かったのか」


「今から鎮火活動ちんかつを行います。よろしいですね?」


「そ、そりゃあもちろん!!お願いします!!」



 宿屋の主人は快諾し、俺達を中へと案内した。



 『スペルマップ』を拡大し、『炎』の正確な位置を特定すると、そこは宿屋の2階、208号室だった。



「それではこれより、私と勇者様にて鎮火活動ちんかつを行います。危険ですから部屋の中へは入らないように」


「わ、わかりました」



 困惑する宿屋の主人を残し、俺達は208号室の中に入った。



「それではリン様、私が『聖門ミリオルド』を開いたら、すかさず『聖塔ミティック』をお願いします」


「わかった!」



 ラマニアは「すぅ」と呼吸を整えると両手を上に掲げ、声を張り上げた。



「開け!『聖門ミリオルド』!!」



 するとラマニアの上げた両手の上に光のスジたてに一本、すぅっと上に伸びた。


 そして次にその光の縦筋たてスジは、左右に「くぱぁっ」と音をたてて拡がってゆく。



「よ、よし!出でよ、『聖塔ミティック』!!」



 ラマニアの『聖門ミリオルド』が準備できたのを見て、俺も自分の『聖塔ミティック』を出す。


 俺もラマニアのように両手を上に掲げ大きな声で唱えると、両手の先からニョキニョキと、まさに塔のような太い光の柱が生えてきた。


 話には聞いていたが、これが俺の『聖塔ミティック』か。


 たしかに西洋の塔みたいな形をしている。


 あとはコレで『炎』を……と思いラマニアのほうを見ると、顔を真っ赤にして目を丸くしていた。



「そ、がリン様の『聖塔ミティック』なのですか?」


「え?そ、そうみたいだけど……?」


「そ、そんな大きいの、入りませんっ!!」


「へっ?」



 そう言われてラマニアの『聖門ミリオルド』と自分の『聖塔ミティック』の大きさを見比べる。


 たしかにこの『聖塔ミティック』の太さに対して、ラマニアの『聖門ミリオルド』の穴は小さい。


 って言うか、そうか、よく考えてなかったけど、鎮火活動ちんかつをする時は俺の『聖塔ミティック』を彼女の『聖門ミリオルド』の中に挿入そうにゅうしなきゃいけないのか。


 でも、ここでのんびりはしていられない。


 ラマニアの開いた『聖門ミリオルド』の穴から、熱い空気が流れてきている。



「考えていても仕方ない!多少ムリヤリにでも突っ込むよ!!」


「ええっ!?」



 『聖塔ミティック』の先端を『聖門ミリオルド』のそばに当てがうと、俺は力任せに中に突っ込んだ。



「ひぐうぅっ!?」



 ラマニアが悲痛の嗚咽を漏らす。



「は、入って……きます……!リン様の、太くて、硬い………『聖塔ミティック』が!」


「あ、ああ、かなりキツイが、もう少し……もう少しでラマニアの『聖門ミリオルド』の一番奥に届く!」


「来てくださいリン様!!私の一番奥に!!」



 俺は少し後ろに反動をつけ、一気に最深部まで『聖塔ミティック』を突き刺した。



「よ、よし、根元まで入ったぞ!この次は……?」


「つ、次はこのまま……このまま門内なかで出してくださいっ!!」


「だ、出すって何を!?」


「あ、悪しき炎を鎮火する……リン様の聖なる波動ウェーブを!!」


「わ、わかった!!イクぞ!!」



 俺は意識を『聖塔ミティック』の先端に集中させ、ラマニアの言う波動ウェーブのイメージを湧きあがらせる。



「来た……この感覚だな!出すぞ!!俺の………聖光嵐波エレク・トルネード!!」



 ラマニアの開いた『聖門ミリオルド』の一番奥まで突き刺した、俺の『聖塔ミティック』。


 その先端部分はこの目で見る事はできないが、だが間違いなくその先端から俺のエネルギーそのものがドクドクと溢れ出している感覚があった。


 まるで俺の中の大切なものが流れ出してゆくように、波動ウェーブが出てゆくごとに俺の力も抜けていく感覚だった。


 徐々に『聖門ミリオルド』内部の熱気が弱まっていき、同時に体力を搾り取られた俺は、『聖塔ミティック』を引き抜いたところで意識を失い、倒れてしまうのだった。

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