第46話 バリトン男モンド

私がおばあちゃんの家に行くと、誰もいなかった。


周りの人に聞きまわったところ、おばあちゃんは二年前に死んだそうだ。


私はとりあえず国司ダムの屋敷に向かった。


都からここまでの日にちを計算すれば、そろそろ到着するころだ。


私は気の陰から屋敷を観察する。


すると明らかに役人らしき人物が門番と話しているのが見えた。


「あれは、バリトン男」

私はつばを飲んだ。あいつの顔を忘れたことは一度もない。


バリトン男は屋敷へと入っていった。


せめてどうにかして彼らの会話を盗聴したい。


私は塀をよじ登り、中へと侵入した。


「どの部屋にいるのだろうか」

私は誰にも見つからないように廊下を歩いた。


するとバリトンの声が聞こえてきた部屋があった。


私は壁に耳をつけて様子を伺う。


「それでわざわざモンド様がなんの用ですか?」

ダムがいった。


バリトン男はモンドという名前らしい。


「ここ数年お前の所からは一切年貢米が納められていない。これはどういうことだ?」

「えっ!?年貢米ならしっかり納めているはずです。依然バラガン様の部下のナギルという者がきて、年貢米の管理は別の者に任せるといっていました」


「ナギルだと?そんなやつ知らんし、そんな使い送った覚えはない」

「なんですと!?それじゃああの使いは・・・」

「偽物だ。お前はまんまと騙されたのだ。バラガン様がこれを知ったらお前は無事では済まない」


「私はどうすれば・・・」

「今バラガン様はお前が年貢米を納めないせいで、かなり不利な位置にいる。これを打開する策は一つ、今年の年貢米は普段の三倍納めろ。それですべて片が付く」


「・・・わかりました」


その時、私はつい物音を立ててしまった。

「誰だ!?そこにいるのは誰だ!?」

モンドがゆっくりと近づいて来た。


私は慌てて屋敷を逃げ出した。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る