第42話 顔に書いてある
男が戻ってきた。
「行首様はお前に会いたいようだ。しかし今晩は先約があり、明日には帰国しなければならないため、また次回この国に来た時に場を設けようとのことだ」
それを聞いてマッドは顔をしかめた。
「どうした?何か不満か?」
「そうか。ならばこの話は白紙に戻してほしい」
「急になぜだ!?」
「実はだな、今私の所には数件密輸の話が持ち掛けられている。もし今日中にここの行首様と話がまとまらないというならば、私はその別の相手と取引をすることになろう」
マッドは子犬を見るような目で男をみた。
「せっかくいい話を持ってきたのに残念だ。では失礼する」
マッドが帰るそぶりを見せると、男は焦って声をかけた。
「わかった!行首様にこのことも話してみる。だから少しそこで待っていろ」
「感謝する」
返事を待っている間、マッドはなにげなく男に訊いてみた。
「ちなみに今夜行首様が会うのは誰なんだ?」
「それは俺も知らない」
「本当にそうか?顔には知っていますと書いてあるぞ」
「えっ!?!?」
男は慌てた。
「どこだ、どこに書いてある!?」
「嘘さ。その感じだとどうやら知っているようだ。教えてもらおうか」
男は言おうかどうか迷っていた。
「私たちは同業者だ。情報を共有するのも大事だと思うが?」
「・・・・ミクロ商団の行首、ミクロだ」
「あーミクロか!」
「知っているのか?」
「ああ、私の取引相手の一人だ。そうか、あいつもここと密輸をしていたのか」
そしてマッドは男にいった。
「どうやら私が今すぐに行首様と会う必要もなくなったようだ。話はすべてミクロを通してもらうことにする。そう行首様に伝えてくれ」
「わかった」
そうしてマッドはその場を離れて私のもとへ近づいてきた。
「その様子じゃうまくいったみたいですね」
「ああ、すべてモモコの計画通りだ」
「それで今日会う相手の名前は?」
「ミクロだ」
「わかりました。では今日のミクロの動きを調べましょう」
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