第38話 勘

マッドはどうやら仲間のもとへ向かったようだった。


私は物陰から会話を盗み聞ぎをする。


「それで例の女は見つけましたか?」

仲間が訊いた。

「ああ、たった今無事にこのボア国に入国した」


「調べたところによると、奴はギルドに護衛の依頼を出したとか。その護衛は見つけられましたか?」

「ああ。けど十五くらいの女一人だけだった」


それは私のことだ・・・。


「どうしますか?護衛を消してからにしますか?」


私を消す!?!?


「いや、そいつは無視でいいだろう。問題は行首の女が密輸している証拠をどうやって掴むかだが・・・」


えっ!?密輸!?私が護衛していた商団は密輸組織だったってこと!?


話が百八十度変わってしまった。


「すいません。マッドさん、それは一体どういうことですか?」

私はマッドに声をかけた。


「誰だこの女は?それになぜマッドさんのことを知ってる・・・?」

「この女はさっき話した護衛の女だ。でもなぜ俺の名前を知っている?」


私はいい言い訳が思いつかず黙り込む。

正直に裏ギルドを調べていたと言えば、間違いなく私は消されるだろう。


「まぁ理由はどうでもいい。それで俺たちになんのようだ?」


そこで仲間が止めに入る。

「マッドさん、もしかしたらこの女は国からの刺客かもしれません!」


「いやそれはない。だから大丈夫だ。安心しろ」

「どうしてそう言いきれるんですか」

「俺の勘だ。俺の勘は・・・?」

「・・・はずれたことがないです」

「そういうことだ」


とりあえず私への警戒は解かれてよかった。

「それで女、用件はなんだ?」


「私の護衛していた商団が密輸組織というのは本当ですか?」

「ああ、本当かもしれない。だから俺たちはその決定的な証拠を探しているんだ」



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