第4話 初めての商売

「まいどありがとうございます」

私はお客さんに微笑みかける。


また短剣が売れた。


「お父さん、今日は大繁盛だね!」

私がお父さんに訊くと、お父さんは「まあ、いつもこんな感じだ」と照れくさそうにしていた。


お客さんからの話でもお父さんの短剣の出来がとてもいいことがわかった。


「こんなに売れるんなら都で売ればいいのに。そしたらもっと売れてお金持ちになれるよ」

私がそういうと、お父さんの顔が引きつるのがわかった。


「そうだな。でもお父さんはこの村が好きだからこの村で商売がしたいんだ」

ぎこちない口調でお父さんは答えた。


私は、お父さんに何か都に行きたくない理由があることを察した。がこれ以上追及はしなかった。


それがお互いのためだと思ったからだ。




空が茜色になるころ私たちは家路についた。


家に帰るとお母さんが夕食を作って待っていた。


「モモコの作った短剣も売れたのね。すごいわねモモコ」

お母さんは自分のことのように喜んでくれた。


「私、これからも短剣作りを頑張る!」

やる気の私を見て両親は嬉しそうだった。


寝る前に私はお父さんのことを考えた。


「どうして都に行きたくないんだろう・・・」

よく考えても何も思いつかなかった。ただ、冷たい風が体を吹き抜けた。

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