第163話 コンビニ休憩
俺は結局、拙速に敵地に突っ込むより、少しでも準備をしておこうとコンビニに立ち寄ることにした。
コンビニ中は動物に荒らされたようで、食べ物系はほとんど残っていない。
天井から光が差し込む。俺が開けた鳩型の穴が、床に鳩のマークを作り出す。
銀斑猫が百紫芋とか言う敵の親玉に告げ口をして、何かが襲ってくるのではと、しばらく警戒続行。その警戒がてら、準備を進める。
日の傾きで、床に出来た鳩のマークが歪んできたぐらいで、今一度外を確認。特に敵らしき姿は見えない。
──銀斑猫は本当に自由を求めて立ち去っただけなのかな? 襲撃があるとしたらさすがにもう来てもいいだろうし。
俺は取り敢えずの安全を確認すると、腹ごしらえするかと、ネカフェから持ってきた乾パンの缶を開ける。そのままバリバリと食べていく。集めてくれたぷにっと達に感謝を捧げながら。
そして、もったいぶって取り出したるは、これ。
とっておきに確保しておいた缶コーヒー。今時珍しいプルタブを開ける。
アルミが引き切れる音。
まずはその香りを楽しむ。
年代物のコーヒーだが賞味期限はギリギリオーケー。
香りも十分する。
乾パンを食べてボサボサになった喉へと、コーヒーを一気に流し込む。
「ふー」いつぶりかのカフェインが、体に染みる。
少ない缶コーヒーの中身を十二分に楽しんだ後、片付け始める。
もう誰も回収はしていないだろうが、ごみをそのままにしておくのも気がひけたので、コンビニ外に備え付けられたゴミ箱に分別して捨てる。
俺は最後に指折り、準備したことを確認すると、敵が居るであろう動物園に向かって歩き始めた。
「冬蜻蛉、待ってろよ」と呟きをコンビニに残し。
空から見たときよりも、距離がある。それでも夕方になるより前には無事に動物園の門の前に到着する。
そこは駐車場が併設された入園ゲート。右手にはもう動いていないチケットの発券売り場がある。
入園ゲート自体は本格派の動物園なのだろう。サバンナかジャングルかどちらがモチーフかはよくわからないが植物や動物のデフォルメされた物がお洒落に飾られている。
俺は何となくアニメっぽい動物のキャラクターが彩られたような子供向けの場所を想像していた。
ゆっくりと俺は入園ゲートへと近づいていく。
なぜゆっくりかと言うと、入園ゲートの左右に、居るのだ。門番なのだろう、二匹の動物が。
一匹はゾウ。しかし、普通のゾウとは大きく異なる。
小さいのだ。
俺とそう背が変わらないぐらいの大きさ。
しかし子ゾウではないのはわかる。立派な牙が生えていた。なんと三対も。
もう一匹はキリン。
こちらは普通に大きい。
ただ、首が二本ある。
そんな二匹はゆっくりと近づいていく俺を、じっと見ていた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます