第162話 くるっくるぼー
荷物から取り出したのは、鳩の形をした手のひら二つ程度の大きさの物体。色は真っ白。有名な鳩のサブレを二まわり大きくしたぐらいの形。
手に入れてから、色々と、本当に色々とあって武器枠の物だということと、装備品名とスキルの名前しか見ていない。
装備品の名前は、『くるっくるぼー』
俺は、ホッパーソードをしまい、くるっくるぼーを装備する。
「えっと、武器なのはいいけど、どうやってこれで戦うんだ?」
でかい鳩サ○レにしか見えない形状。鈍器にしては軽い。
──ぼーって、弓とかそういう感じだよな?
俺はためしに右手でサブレのしっぽ部分を握り、まっすぐ前に突き出してみる。
「おっ、これが正解?」
俺のその動き合わせ、くるっくるぼーがガチャガチャと音をたてその両翼を広げる。さらに嘴を広げた状態に。
さらにしっぽの部分の上が分離してクロスボウの巻き取り機みたいな物が生えてくる。
「これ、回すのか?」と、俺はカニさんミトンをはめた左手で少し苦労しながら巻き取り機を回し始める。
くるくる、くるくる。
しばらく回しているとくるっくるぼーから、クルッポーという鳴き声が響く。さらにしっぽの部分がカチャカチャと変形、一部が広がるようにして、トリガーが現れる。
──なんか音したぞっ。鳩の鳴き声? それにトリガーが現れた。準備完了ってことだよな?
俺は近くのコンビニにくるっくるぼーを向け、トリガーを握りこむ。
くるっくるぼーが激しく白く光ったかと思うと、鳩の形をしたイドが、くるっくるぼーから射出された。
「うぉっ」
その光に思わずびっくりした俺は、くるっくるぼーを握った右手を上にあげてしまう。
その動きに合わせたかのように、前に飛んでいた鳩型のイドが上空へと、軌道を変える。
そのまま上昇を続ける鳩型のイド。
「びっくりしたっ。これ、もしかして打ち出したイドを操れるのか?」
俺は試しにくるっくるぼーを下に向けてみる。
鳩型のイドが今度は下へ向きを変える。
そのまま色々と試して、何となく操りかたを把握したところで、最初に狙ったコンビニに鳩型のイドを当ててみる。
鳩型のイドがコンビニに触れた瞬間。
静寂。
「……何も起きない? 飛んでた鳩型のイドも消えた?」
俺は鳩型のイドが当たったはずのコンビニの屋根を確認しようと飛行スキルを発動する。
屋根の上まで上昇した俺の目に飛び込んできたのは、一羽の鳩。
本物の鳩が、コンビニの屋根にとまっている。
俺の姿を見て、どこぞへと飛び去っていく鳩。
そして、コンビニの屋根には鳩一羽の形の穴が空いていた。
「え、これって、もしかして鳩型のイドが当たった部分が一羽の鳩に変わるだけのスキルなの?」
俺は改めてステータスを確認。
装備品のくるっくるぼーの欄にはスキル名として、ただ『ダヴ』と書かれている。
「いや、確かに鳩だけどさ。ビジョンじゃなかったから、なんか手品的な物かと期待したよ。はぁ。俺が間違ってたのか。……さて、これからどうしよう」と俺は丘の上に見える動物園を遠目に、空に浮かびながら頭を抱えるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます