第78話 バングル
白い大理石の床に、ぽつんと真っ黒なバングルが落ちている。
すたすたと近づき、拾い上げるミズ・ウルティカ。
「あっ」俺は思わず声が漏れる。
ミズ・ウルティカは俺の方へ近づいてくると、そのバングルを差し出してくる。
「朽木竜胆、これが貴方の強さの秘密なのね」
「え、どうして……」
「僅かに貴方のイドをまとっているのが感じられます。触るぐらいでしたら弾かれることはないみたいですが、私がこれを装備しようとしたら違和感を感じるくらいの強さのイドはありますね」
それだけ言うと、踵を返すミズ・ウルティカ。
「待って下さい。……何も聞かないんですか? それにあの、モンスターをほとんど倒したのもミズ・ウルティカです。ドロップの分配とか……」
と、おれ。江奈も近づいてきて、俺たちのやり取りを伺っている様子。
「貴方が話したいのなら聞きますよ。でも、私からは聞きません。強さの在り方は、人それぞれなのだし。聞くのは野暮というものでしょう。ドロップ品の分配ですが、今回の任務、当然冒険者の貢献ポイントは加算されるでしょうが、金銭的な報酬は我々ナインマズル三名で負担する予定です。それも含め、生きて帰ってから調整致しましょう。」
そう言われてはじめて俺は今回の任務に関する冒険者としての報酬の事、何も考えていなかったことに気がつく。
師匠の仇を討つこと、アクアを止めることに意識がいっぱいだった自分にようやく気がつく。
「わかりました。よろしくお願いいたします。」
そう言うと、俺はカニさんミトンを外し、その黒いバングルを装備する。
ステータスを開く。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
氏名 朽木 竜胆(クチキ リンドウ)
年齢 24
性別 男
オド 24(3down)
イド 20(5up)
装備品
ホッパーソード (スキル イド生体変化)
チェーンメール (スキル インビジブルハンド)
ダークバングル (スキル 陰魔法)new!
黒龍のターバン(スキル 飛行)
Gの革靴 (スキル開放 重力軽減操作 重力加重操作)
スキル 装備品化′ 廻廊の主権
召喚顕在化 アクア(ノマド・スライムニア) 送喚不可
魂変容率 17.7%
精神汚染率 ^D'%
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
(すごいイド特化の装備だ。深淵のモノクルでのオドの上昇には及ばないけど、ここまでイドの上がる装備品ははじめてだな。スキルは陰魔法か。泡魔法に続いて、二つ目の魔法スキルだ、なんか嬉しくなるよね。やっぱり魔法はロマンがある。)
俺はしげしげとバングルを見る。
(惜しいのは、同じ腕装備だから泡魔法と陰魔法の併用が出来ないことか。そういや影魔法じゃなくて、陰魔法なのか。どう違うんだ?)
「さあ、朽木、行くわよ」と悩む俺に江奈が声をかけてくる。
俺は試すのは後にするかと、カニさんミトンを外したまま、先行する江奈とミズ・ウルティカのあとを追った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます