伝説の勇者のパーティーには神様が居る。
地獄狼
物語がプロローグから始まるのは恒例である。
その昔、魔王ヴァイスと呼ばれる悪魔が世界征服を目論んだ事があった。
世界征服を目論だけあって、魔王ヴァイスは強力な力を持っており、世界各地に手下の悪魔を放って着実に世界を手中に納めつつあった。
それを危惧したトアール王国の王は国から選ばれた者を選出し、勇者として魔王討伐に向かうことを命じた。
選出方法は、王国に古来から伝わる占いによって決められる。この占いで決めると言うのも凄く胡散臭い話ではあるが、なんでも一刻を争うような状況でしか行うことができない禁断の儀式であるとか、今まで一度も外れた事がないだとか、少なくとも言い伝えではそう伝えられている物であった。
こうして数多くの名だたる戦士達の中から、1人の青年が選ばれた。
年齢は二十代後半。特に目立った経歴もなければ、特に眼を引くような特徴も持たない。もちろん最初は誰もが『この男が勇者で大丈夫だろうか?』と不安を抱いた。
しかしこの旅立ちから数年後、彼は見事に魔王ヴァイスを討伐し、立派に凱旋を果たす。
そのさらに数年後にとある出来事がきっかけでこの王国は崩壊してしまうことになるが、それでも魔王を討伐したこの異質な勇者の事を世界中が記録する事となった。
だが、この勇者の伝説を聞いた者は必ずと言っていいほど、初めは伝説を信じようとしなかった。
それはただ単に世界が求めた『勇者像』と、その勇者が極めた『勇者道』があまりにもかけ離れていたからに違いは無いだろう。
誰が信じようと思うだろうか。
勇者が振るっていた剣は伝説の剣等ではなく、どこの街にでもある格安のロングソードであったなんて。
勇者が集めたパーティーが、全員キャラの濃すぎる面子であったなんて。
そしてそのパーティーのは、『女神の加護を持った選ばれし者』がいたのではなく…
『女神様そのもの』が同行していたなんて……。
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