クレイジーガール
上条海輝
第1話クレージーガール
ある秋の日、高校の放課後の事である。
ホームルームが終了し、帰宅部のエースを自称する俺は、その名に恥じぬ様にいの一番に帰宅しようとするが、なずなに話かけられた事により帰宅部エースの座を他の誰かに譲る事になった。
長い黒い髪、気の強そうなつり目、琥珀色の瞳、通った鼻筋の整った顔立ち、短いスカートから覗くスラリと伸びた美脚は黒のニーソックスで覆われている。
十人いたら十人振り返る、目を見張る様な美少女である。
そんな、なずなが俺に向かって、
「暇だなー、暇だなー、どうしよう・・・そうだ、遊びに行こう」と言ってきた。
普通の男なら、美少女の誘いには喜んで行くだろうが、睡眠と美少女を天秤にかけて睡眠が勝ってしまう俺は、
「用事がある。」と断ると。
「あんたの用事なんて帰って寝るだけでしょ。」と言い当ててきた。
エスパーかお前。
「本当に用事がある」と言い帰ってしまおうとする俺になずなは、
「で、どこ行く?」と言ってきた。
俺の意思は完全に無視である。
半分諦めかけてきた俺は。
「えらくテイション高いな、何か良い事でもあったのか?」と呆れながら聞いた。
すると、なずなは嬉しそうに、
「何言ってるの、私が本気出したらあと二回は変身するわよ。」
フリーザ様かよお前は。
胸を張って言ったなずなに、俺は。
「張る胸もないくせに。」と言うと。
ドスッ。
ドタッ。
今の音は、ノーガードの俺の腹になずなが腹ぱんを決め、俺が倒れる音である。
胸が小さいのがコンプレックスであるなずなは、痛みで蹲る俺を椅子の様にし、座り。
「次言ったら、首を刎ねる」と言ってきた。
声がマジである。
怖かった俺は。
「す、すいません。」と恐怖しながら言う。
「分かればいいわ。」と言って俺の上から退いてくれた。
今の一件で、更に行く気をなくした俺は、サッとなずなの横を抜いて帰ろうとすると。その動きに合わせたなずなが、俺の前にいきなり現れ、誤って押し倒してしまった。
教室に残っている連中の目が痛い。
慌ててなずなを起こすが、目が涙目である。
更に教室の連中の目がきつくなってきた。
慌てる俺は、なずなに、
「頼む、みんなに状況を説明してくれ、じゃないと俺の高校生活が終わる。」
するとなずなは、
「じゃあ、今日付き合ってくれる?」と交換条件を出してきた。
背に腹は代えられない。
いやいや承諾すると、なずなはみんなから見えない位置でニヤリと笑い、
「ごめん、ぶつかっちゃて。」とみんなに説明した。
今、こいつ笑わなかったか?
確信犯め。
拳骨くれたろっか。
などと、考えていると危険を察知したのかなずなは、
「化粧直してくる。」と逃げてしまった。
怒りが静まらない俺は、トイレに行き鏡の自分に向かって自問自答した。
「行く事になってしまったのはしかたない、平穏な学園生活の為だ。しかし、ここからが重要だ、早くあいつを満足させて帰ろう。」と無理やり自分を納得させた。
トイレの中に居た人達に変な目で見られたが気にしない事にした。
・
教室に戻るとなずなの姿はなく、代わりに机に置手紙があった。
「用事があったの忘れてました。先に帰ります。PS.ごめんね。」
女心と秋の空は変わりやすいと言うが、まさかトイレに行ってる五分間の内に変わるとは思っても見なかった。
しかもあの野郎、謝罪文をPS.にしただけじゃあきたらず、ごめんの一言ですませるとは。
何だかよく分からないが、やらなきゃいけない事はよく分かる。
「明日、あいつを殴ろう。」
上条 海輝
クレイジーガール 上条海輝 @kaiki730
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