花の星
古癒瑠璃
プロローグ
向日葵の女
チクタク。ちくたく――
――人生には賞味期限がある。
その日、街へ向かう途中の向日葵畑で女の死体を見つけた。
荷物も少なく、まるで、ふっと自宅近くの商店に買い物に出かけたような気軽な格好の女だ。
地面に散らばった腰丈の黒髪が妙に気分をそそり、俺は女の死体へと近づいた。
女の命がないのは自明だった。瞳はここではないどこかを見つめたままでいる。
命のないその瞳が何を映しているのか気になりながら、俺は女の首に刺さったナイフを粗雑に抜き去ると、そのまま放り投げた。
代わりに、命の失われた首筋の虚空が寂しそうに思われたから。
咲き誇る向日葵から掌で簡単にむしり取れるだけの種をむしり取ると、致命的に欠けてしまったものの埋め合わせにと、その種を一杯に敷きつめた。
それが、事の終わりだ。
この出来事が花を結ぶのは、来年の話になる。
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