遠く及ばず

 帳簿からシャナンたちが冒険者組合に訪れた際に記録された書類をサラが取り出す。そこに記載された最初のステータスと先程紙に書いたステータスを見比べて、サラは全員の成長度合いを訥々と述べ始めた。


「そこのガタイがいい人…あなた、防御適正がレベル3まで上がっているわね。このレベルにしては上等よ」


 ほう、とジェガンが軽い感嘆の声を上げる。ただでさえ低レベルでスキル持ちのトーマスが更にスキルが向上していることに感心していた。


「……それに、ツンツン頭の生意気な面構えの人、魔法剣士のくせに回復ヒールのレベルが3まで上がっているわ……治癒術師ヒーラー顔負けね」

「誰が生意気な面構えだ!誰が!」


 サラの言葉はトゲがあったが、決して卑下はしていない。むしろ褒めてはいた。

 だが、ルディは“生意気な面構え”という言葉にバカにされたと思い、悪態をつく。そんな彼を無視してサラは話を続ける


「弓使いのお嬢さん…あなたはそこまで上がってないわね。…そもそもレベルが…一つしか上がってないから…しょうがないわね。でも弓適性のレベルが上がっているわ」

「まぁ、レベルそのものは仕方ないわ。でもスキルレベルが上がっているのは地味に嬉しいわね」


 望外のスキル向上にセシルが嬉しそうな声を上げる。セシルは元々のレベルが8であるため、成長の度合いが他の面々より少し遅くなっていた。


 レベルは上に行くほど次のレベルに必要な“魂”が多くなる。そのため、上位レベルになればなる程、成長が鈍化していく。今はセシルが一番高レベルのため、他の者よりレベルが上がりにくい。だが、しばらくするとその差は徐々に詰まってくることになるだろう。


「…魔法使いのあなた…火焔ファイアがレベル4まで……上がっているわ……火焔魔法適正も…レベル2まで上がっているわね…優れた火炎の魔法使いね…」


 カタリナも他に漏れず魔法やスキルが向上していた。普段は冷静な彼女の顔もどことなく嬉しそうである。


 サラがメンバーの評価を簡単に述べた後、先程書き込んだ紙を一堂に見せる。その紙には、トーマス、ルディ、カタリナのレベルが7、セシルは9と記載されていた。


 セシルはレベル9になったおかげで全ステータスが1〜2ほど向上していた。対して、他の三人はレベルがレベルが7まで向上しているためか、ステータスも3〜8ほど向上し、数日前より格段に強くなっていた。


 だが、サラは無情にも否定の言葉を告げる。


「…このレベルにしては…たしかに優秀よ……でも、”討伐“隊には推薦できないわ……スキルがあっても……ステータスがまだ低すぎる…魔族にあったら……勝ち目なんて無いわ」


 能力の底上げ、スキルレベルの向上と強さが増した彼らだったが、ジェガンの示す調査隊の条件である“レベル20”の能力には遠く及ばないのである。


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