第61話メッリト、デメリット……
部室の中に俺たち二人は入るが、何故今俺はこんなところで花と二人になっているのかわからなかった……。
そもそも俺は、花が勝手に文化祭の準備をサボって抜け出したから追いかけてきたんだ。
「おい花、こんなところにいないで文化祭の準備に戻るぞ」
俺は無理やり花の手首を
「ちょっと、いきなり馴れ馴れしく呼ばないでくれる? あと私は教室に戻る気はないわよ」
そういって花は俺の手を無理やり払った。
確かに昨日名字で呼んでたのに、今日いきなり名前で呼ぶのって失礼なのか?
でも前は名前で呼んでたから元に戻っただけだし……。
心の中でどうでもいいことを考えていると、俺は自分の中で話が脱線していってることに気が付いた。
今は名前の呼び方なんかどうでもいい。
「とりあえず教室に戻るぞ」
そういわれた花は、自分の鞄から本を取り出して読み始めた……。
「さっきも言ったように私は文化祭の準備に加わる気はないわよ。それに先生も言ってたじゃない、『部活がない生徒が残れ』って……」
「それは部活動でも出し物がある生徒ってことじゃないのか? 別に俺たち文化祭で何かやるわけでもないし……」
「じゃあ何かやればいいじゃない。そうね……コミュ部だから、あなたが一日中他の生徒の話し相手になるっていうのはどう?」
何だその
俺のコミュ力を買ってそんなことを言っているのか、はたまた俺を地獄に叩き落したいのか……。
どちらにせよそんなことする気もない。
俺は一度座りなおして、また花の説得に取り掛かる。
「そんな拷問のようなことは断るし、ここの部活で出し物をやる気もない。別に文化祭の準備ぐらい手伝ってくれてももよくないか?」
そういわれた花は、こちらを向かずに本をぱらぱらと読み続けている……。
また無視ですか。
なんか最近対応が冷たくないか。
いや、別に前から冷たかったからやっぱ同じなのか?
しばらく沈黙が続いた後に、花は本を閉じて喋りだした。
「別に私がいないからといって、
俺にとってはだいぶ困ることを言ってきたのだが、わざわざ俺が花に文化祭の準備を手伝ってもらいたい理由は他にある。
この文化祭の準備期間を通して花が他のクラスメイトと仲良くなれば、花がいじめられるという可能性は少なくなくなるのではないかと思ったからだ……。
「まあそういうわけで私は文化祭の準備は手伝わないわ」
「そこを何とか……」
手を合わせて花にお願いする。
もうあまり残っていられる時間がない……。
俺が時計を見て時間の確認をすると、花も同じタイミングで時計を見た。
そして花は何かを考えた後に、口角を上げてにやっとほくそ
「どうしてもというならメリットを提示しなさい。あなたがメリットを出して、それを私がメリットだと認めれば1ポイント。三ポイント溜まったら手伝いに行ってあげる」
やたら上から目線で意味の分からないを言ってきた花の言葉に、少々困惑した。
何だそれ。
文化祭の準備に参加するメリットなんてあるわけないだろ!
そんなことを考えていても始まらないので、俺はとりあえず何か言うことにした。
「えーと……。文化祭の準備に参加すると……楽しい」
自分で言っておいて、何にも楽しくねーよとツッコミを入れたかった。
花の反応を見ても、メリットとして受け入れるはずもなく、呆れた様子だった。
「はぁ……。まず何が楽しいのか具体性に欠ける。あと『楽しい』とか小学生がいいそう。それから……」
止むことのないダメ出しに、心が折れそうになった。
「まあ今矢須君が言ったことが、メリットとして受け取れるかと言われたら受け取れないわね。それどころかあまりにも適当すぎてむしろ腹が立った。マイナス100ポイント」
しょっぱなから
何だよマイナスって……。
しかも一発で100ポイントもらえちゃったよ。
でも俺は諦めるわけにはいかなかった。
俺は小さい脳みそをフル回転させて、いくつもメリットと思われるものを出して言ったが、ことごとく蹴られていった……。
「まだやるの? 今のポイントはマイナス1420ポイントよ。あと1423ポイント……。道のりは長そうね……」
だめだ……。
俺が何かを言えば言うほど点数が下がっていく……。
もう諦めかけていたが、花が昔言ったことを思い出す……。
「じゃあこれが最後だ……」
「えぇ、あなたの発言でどれだけポイントが下がるか見ものだわ」
もう最初っから下げる気満々かよ……。
でもこれでもダメだったら、今日のところは引き下がるしかない。
俺は昔花に言われたことを、花に
「この二年生でやる文化祭は最初で最後だ。この
昔花が合唱コンの時に行っていた言葉を、俺は少し変えて花に伝える。
これには花も、即否定はしなかった。
そして時計を見た後に本を閉じて。
「そうね……。誰かさんの受け売りな気がするけどいいわよ……。もともとマイナスなんて制度はなかったのだし、それを差し引いて今のあなたの言葉はプラス三ポイントってことで」
そういった花は、本を鞄にしまうとすぐに国語研究室を後にした。
俺も花に続くように、国語研究室を出ていく。
何とか成功はしたものの、俺の
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