第60話懐かしの部屋……
あの後もずっと俺と花との間には会話はなく、もう六時間目も終わり帰りのホームルームの時間になっていた。
ドアを勢いよく開けて入ってきた担任は、一枚のプリントを黒板に張り出した。
そしてそのプリントを思いっきりたたいた。
その大きな音に、クラスの視線が担任に向いた。
「お前ら! 再来週にはもう文化祭だぞ! 早速今日から準備していくから、気合入れていけー」
やけにテンションの高い担任に合わせるように、クラスメイトも騒ぎ出した。
文化祭……。
この学校行事は苦い思いでしかない……。
一緒に回るやつがいないので、毎年トイレとか図書館に
後は……。
自分で考えていても
「それで今日から放課後は、部活動がないものは残ってもらおうと思う!」
それを聞いていた帰宅部と思われる連中達のテンションが、一気に下がった。
もちろん俺も放課後に居残りで作業するなんてのは嫌だ……。
めんどくさいという理由もあるが、居残りなんてさせられたら放課後橋川との
俺には、文化祭なんていう学生のイベントを楽しんでいる時間はこれっぽっちもない……。
どうしようか考え込んでいると、右斜め後ろの席に座っている橋川が肩をちょんちょんと突いてきた。
「なんだよ?」
「いや、放課後どうする? 私は部活があるからクラスの方には残れないと思うんだけど……」
橋川のその発言を聞いて少し驚いた。
コイツ部活動とかやってたんだ……。
まあどうでもいいか。
部活動をやっていようがなかろうが、放課後に時間が取れないのは同じことだ……。
「まあその……部活終わったら下駄箱で待っててくれ」
女子にこんなこと言うのは少し照れ臭かった。
俺の照れた反応を楽しみようにニヤニヤしだした橋川は、小さな声で『分かった』と耳打ちした。
「それじゃあ早速残れるものは残って作業に掛かれ」
担任の指示に従い部活のある生徒は部活動へ行き、帰宅部などの残れる連中は教室で残らされた……。
俺たちのクラスは”祭り”をテーマにするらしく、射的や
普通に文化祭らしく飲食店でいいと思ったのだが、担任
しかも台など全部、木材を買ってきて自分たちで手作りするらしい。
何でこんなめんどくさい行事が存在するんだろうか……?
合唱コンの次に嫌いな行事だ。
他の生徒が黙々と作業に取り掛かる中、俺は何をすればいいのかよくわからないので、とりあえず何でも知ってそうな花に聞くことにする。
教室を見渡すと、ドアから出ていく花の後ろ姿が目に
何であいつナチュラルに帰ろうとしてんの!?
あまりの大胆さに、驚きが隠せなかった。
俺は花の後を走って追いかける……。
花は下駄箱に向かうでもなく、俺たちがいつも行っていたあの場所へと向かっていた。
「国語研究室……?」
花の後を追いかけて着いた先は、俺と花が所属している同窓会の部室だった……。
花に追いついた先で、ばったりと目が合う。
「あら、誰かと思ったら……誰かしら?」
小首をかしげて聞いてくるが、
「いやいや、今日の朝話しただろ。あと何で文化祭の準備サボってるわけ?」
「そうだったかしら? まあいいわ、とりあえず中に入りましょう」
花に言われて、俺は言われるがままとりあえず部室に入る。
何でこんなところに花は来たんだ?
まさか部活動で参加出来ないっていうつもりじゃないよな……?
俺は状況を整理するために、とりあえず近くにあった椅子に腰かけた。
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