第46話充実した一日……
あれからというもの、俺は花の宿題をずっと写す作業をしていた。
夏休みの宿題というのは、四十日間の休みの間に終わらせるもので、それを一日で終わらせようとするのは写してでも時間がかかる。
それに自由研究とか写せないのもある……。
てか今から自由研究とか無理じゃね?
何研究すんだよ。
でも確か、去年やったエビの観察日記が残っていたはず……。
自由研究と言っていいのか怪しかったが、まあ別に評価が
俺は気分転換として花に休憩を貰い、自室にある観察日記を取りに行く。
机の引き出しの中を開けると、評価Bと書かれたA4プリントが出てきた。
もう評価が書かれてしまっているので、そのページだけ切ってまたやればいいだろう……。
俺はエビの観察日記を手に取って、元居た場所へ戻った。
「あら? 何それ」
俺が持ってきたプリントに興味を示したのか、花がのぞき込むように見てきた。
「これか? これは去年の自由研究だ」
「あぁ、確か……貝の観察日記だったかしら?」
小首をかしげて聞いてくる花だが、少し違う……。
「いやちょっと惜しい気がするけど、俺がやったのはエビだ」
それを聞いた花が手をポンと打った。
「思い出したわ。確かおばけエビ飼育観察キットとかいう、小学生が買ってきそうなものを急に買ってきたわね」
「よく覚えてるな……」
そういえば、『小学生の自由研究にぴったり』みたいなフレーズにつられて、中学生でも行けるだろって思って買った気がする……。
そんなどうでもいいことをよく覚えているもんだと思った。
記憶力がいいのか、他に覚えることがないのか……。
俺が日記を見ていると、花が時計を指さした。
「もうこんな時間よ! そんなのどうでもいいから早く写しなさい」
時計を見ると、もうすぐで18時になろうとしていた。
もうそんなに経っていたのか……。
写すのに集中していたおかげか、時間が進むのが早く感じた。
「じゃあ最後の仕上げと行きますか……」
俺は黙々と残っている宿題を写す作業をして、花はそれを静かに見ていた。
この夏休み、結局何にもしていないが、最後の日だけは少し楽しいと思った。
今日という短い時間だけで、今までも何十日という時間よりも充実できたのは何故だろうか……。
宿題という辛くてめんどくさい作業をしているこの時間が、どんな楽しいことをしているときよりも幸福感に
俺はそんなことを思いながらも
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