第33話彼女の笑い……

 程なくして学校に着く。

 教室に入るなり、すぐにうつぶせになる。

 これは俺は眠いからうつぶせになってるだけで、決して話し相手がいないとかそういうわけじゃないから……って誰に言い訳してんだ俺は……。

 俺は授業開始のチャイムが鳴るまで、うつぶせで過ごしていた……。

 

「それじゃあ始めるぞー」


 チャイムと同時に入ってきたのは、髪の毛がほとんど死んでいるおじいちゃんだった……。


「今日から君たちの国語を担当することになった石井だ。まあ今日は最初の授業ということもあるから、みんなにはこれを書いてもうおうと思う」



 そういって石井先生はプリントを配りだした……。

 

「今配ったのは自己紹介プリントだ。別に私以外見ないから、好きなことを書いてくれて構わない」


「あら、自己紹介黒歴史プリントですって。昨日の記憶がよみがえるわね」


「もうやめてくれ……」


 しょっぱなの授業からこれですか……。」

 昨日の苦い記憶が蘇る……。

 俺は昨日の出来事のせいで、自己紹介に軽いトラウマを持ってしまったのかもしれない……。

 

「まあ全員の前で言いたい人がいるなら、言ってくれて構わない」


「ですって……」


 その言葉を聞いて、花がこっちを向いて言ってくる……。


「おい、何でこっちを見る! 俺は絶対に言わないぞ」


 誰がなんと言おうと絶対に言わないと、俺は心にちかう。

 てかこんなのやるやついんの?

 そう思ってると、前の方に座っている男子が手を挙げた……。


「じゃあ俺やりまーす」


 まじかよ……。

 こういう奴がクラスの中心人物になっていくんだろうな……。


「じゃあ昨日もしたけど俺の名前は粕谷響かすがやひびき。趣味はサッカー、特技は筋トレって逆でしたね」


 その自己紹介に、クラスが笑いに包まれた……。

 なんてコミュ力だ……。

 俺には一生かかっても出来ない芸当だ……。

 なんて感心していた……。

 

「く……くく」


 え?

 隣で花が笑っていた……。

 確かに今の自己紹介、内輪には面白かったのかもしれないが、まさかコイツまで笑うなんて……。

 なんてギャグセンだ……。

 

「そんな面白かったのか?」


「えぇ、今の粕谷君の自己紹介を聞いたみんなの反応を見て、不覚にも笑ってしまったわ」


「どういうことだ?」


 粕谷のネタに笑ったんじゃないのか?


「昨日のあなたの自己紹介を聞いた、みんなのドン引きした表情を思い出してしまってね……、その反応の差に笑ってしまったわ」


「笑うとこそこかよ……」


 コイツ、何でこんなにも俺の新しい黒歴史を掘り返してくるの?

 俺になんか恨みでもあんの?

 

「キーンコーンカーンコーン」


「おっと、じゃあ今日はここまでにしよう。号令は掛けなくていい」


 そうしてチャイムが鳴ると同時に、石井先生は教室を出ていった……。

 もしかして他の授業でも自己紹介するのか……。

 俺は今すぐにでも帰りたい気持ちでいっぱいだった……。


 

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