第34話彼らの日常……

 結局あの後の授業も、さんざん自己紹介という名の拷問を受けさせられる羽目になり、その都度つど花にからかわれた……。

 こんなに学校で疲れたのは久しぶりだ……。

 だがその長かった学校からも解放される……。

 時刻は3時20分。

 今は帰りのホームルームの最中だ……。


「それじゃあ皆さん、今日はお疲れさまでした! また明日も頑張っていきましょう。それじゃあ、号令お願いします」


 やっと終わる……。

 号令をかけられたので、すぐに帰ろうと思ったが、用事を思い出す……。

 

「なあ花、ちょっと待っててくれないか?」


「あら? 世界一暇なことで有名な優太が用事?」


「……」


 花の遠回しな皮肉にも、何も言い返す気になれないぐらい俺は疲弊ひへいしていた……。

 

「どのぐらいかかるの?」


「多分五分ぐらいだけど……、待っててくれるのか?」


「えぇ、別にすぐに帰らないといけないというわけでもないし、待ってるわ」


「そうか、じゃあすぐに終わらせるから」


 俺の用事というのは、委員会の仕事だ……。

 このクラスでの委員会を決めるとき、とりあえず一番楽そうなのを適当に選ぼうと思い、施錠せじょう委員というのに入った。

 この委員会、楽だと思ったら案外そうでもなかった……。

 移動教室の時には一番遅く出て、教室のカギを閉めないといけないし、帰りの時も、クラスメイトが全員出るまで待たなくてはならない……。

 正直この委員会に入ったことを後悔している……。

 今もクラスメイトが全員教室から出るのを待っている……。

 ほとんどの生徒が教室から出ていったなか、一人の女子が机で本を読んでいた……。

 俺は早く出ていって欲しかったので、その女子に声をかけることにしたが……。

 やべぇ、なんか緊張してきた……。

 思えばここ最近、花と家族以外と会話してない……。

 しかし、うじうじしてても始まらないので、意を決して話しかける。


「あの……」


「ひぃ! な……何ですか?」


 なんで俺こんなにビビられてんの?


「いや、そろそろ教室閉めるけどいいか?」


 そういうと、その女子は辺りをキョロキョロ見渡すと……。


「すいません、すぐに出ていきますね」


 そうして逃げるように教室を出ていってしまった……。

 まあいいか……。

 俺はクラスに誰もいないことを確認して、カギを閉める。

 教室の外には、花が待っていた……。


「今の子、すごい勢いで走ってったけど、あなた何したの?」


「別になにもしてねーよ……。声掛けたら走ってどっか行った」


「まあこんな怪しい人に声をかけられたら、それは逃げるわよ」


 怪しい人って……、クラスメイト何ですが……。


「まあ後はカギを渡すだけだから、下駄箱で待っててくれ」


 俺は職員室に向かい、担任にカギを渡すとすぐに下駄箱に向かう……。


「それじゃあ、帰りましょうか」


「あぁ」


 俺達は、いつも通り他愛もない会話をしながら家に向かった……。

 こんな日常が、ずっと続いていくもんだと思っていた……。

 

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