鵺の唸る夜に

飛瀬川吉三郎

第一夜魔導師殺し


『平家物語』などに登場し、猿の顔、狸の胴体、虎の手足を持ち、尾は蛇。文献によっては胴体については何も書かれなかったり、胴が虎で描かれることもある。また、『源平盛衰記』では背が虎で足が狸、尾は狐になっている。さらに頭が猫で胴は鶏と書かれた資料もある、「ヒェーヒェー」という不気味で乾いた唸り声に似た鳴き声をする、鵺退治でも有名だがこれは天皇の『朝廷』と『朝廷』に歯向かう『凶賊まがつぞく』との対立の構図とされているらしい(これ忌憚ゆえ民草知らずなり)。


👁👁👁


深夜、丑三つ時、夜更かしをする者ならば、普通、微睡みドラウジネスが襲いかかる時刻だが、夜行性の存在、『魔物の類い』にとってはその時間帯は彼等の活動時間である。


その『魔物の類い』を人知れず元々の住みかである魔界に退かせる者達、『退魔』の者が当然ながらいる。


日本は神道、八百万の主神である太陽神天照が治める天界高天原、地上界イザナミとイザナギが国産みで産んだ大八島国、そして大八島国の下にある誰にも知られるのを慮られる魔界、禍低之地底まがつていのちていという場所がある、最後のはこれ忌憚ゆえ民草知らずであり、仮に一般大衆が魔物の類いを流布するのは中二病扱いされるようになっているし、流布されたとしても大抵の場合それは嘘偽りに変わる。


『魔物の類い』はデフォルトで不死性を有しているために、陰陽道、法力の力で祓っても、それは現世からの隔離にしかならない。


それでも、人間に害意を向ける邪悪なる存在は退魔されなければならないだろう。


退魔により現世から隔離すれば、その『魔物の類い』は現世からいなくなる、しかし、、それは恐怖心が存在を魂に刻みつけるからだ、ゆえに『魔物の類い』は自己主張をする、自己顕示欲なりまま人々を害して、我こそは最も恐れ多きものと知らしめたい我欲がある、それがとことん邪悪を際立たせる。


「例外はあるーーー」


二丁拳銃を持ち、火もつけず曲がりくねった煙草をくわえ、シルバーアクセサリーをじゃらじゃらさせ、ダボダボのファー付きカーキ色のコートとよれよれのシャツにズタズタのジーンズをしている無精髭の男は呟いた。


集団性心的外傷パプリック・トラウマ、恐れ続けられ過ぎた者の末路だ、それは人が化け物扱いされる事であり、奴等、『鵺』にとってはそこまで達しないように『恐怖度』を調整する、


今関係ない事を呟き、夜間、山奥、忌々しき杉花粉の元になる杉の雑木林の中、男は暗闇に眼を慣れさせながら獲物ターゲットを探していた。


背後を振り返り、右の拳銃で二発放つ。


「ちっ、外したか?」


「ヒェヒェ!ドングリ投げられたので?」


獲物ターゲットは自分の背後にどうやらいるらしい。


「弾丸をドングリ扱いとはな」


「ヒェヒェヒェ!」


「さーてどうすっかなぁ」


その時、首を刃がかすめた。


「おっと」


暗闇に光る赤い両目、暗闇に鈍く映る緑色の体、それは巨大な蟷螂であった。


「『魔素』で大きくなった『魔虫』です、どうか簡単に死んでくれないようお願いいたしませんよ、さっさと死ね!人間風情が!」


「シャアアアアアアア!!!」


巨大な蟷螂が咆哮をした。


そして自分に向けて鎌を振り下ろす。


それをかわして前足の先端の鎌の部分と前足の後ろ部分の間に接続部を横から撃ち抜く。


「シャ?シャアアアアア!?」


ボトリ、と蟷螂の『魔虫』の片方の鎌は撃ち落とした。


「シャア!!!」


今度は片方の鎌をふるってきたがその前に蟷螂の『魔虫』の頭部を二丁拳銃で集中放火した、気分はトリガーハッピーに近いぐらいにスカッとしていた、その銃弾の雨により、蟷螂の『魔虫』は痙攣して、そして倒れた。


「ヒェ?おやおや『魔虫』が死んでしまいましたか、山間地に棲むハラビロカマキリの成虫は寄生虫が宿ります、それはハリガネムシといい、それも『魔虫』にしましタァン!」


「シャ、シャギャアアアアア!!!」


死んだばかりの蟷螂の『魔虫』の中身からなにか冒涜的でにゅるにゅるした細長いがしかし大きな存在が這い出てきて、それがのたうち回りながら自分に襲いかかる。


「『魔虫』使いの魔導師、蛇蝎丸邪連!この程度、こけおどしにしかならないんだぜ?」


クイックリロードをして再度、そのハリガネムシの『魔虫』に向けて集中放火をした。


そしてハリガネムシの『魔虫』も倒した。


「ヒェーー?こうもあっさりとはねェ!?」


「次はお前だ、ヒェーヒェーうるせぇんだよ、耳障りだ、さっきのはと推測するぜ?なら、至近距離でさっきと同じ事をする」


「ヒェヒェヒェヒェヒェヒェ!残念ながらその推測は外れですねぇ!わたーしは!なんと!肉体の全てを『魔虫』に変えているんですヨオオオオオオオ!つまり虫で一杯の山の中は私の領域テリトリーなんですよォオオオオ!?」


「そうか、この山の中、はねぇ」


ガンマンは右手の拳銃は青くカラーリングされて、左手の拳銃は赤くカラーリングされていた、その赤くカラーリングされた左手の拳銃が燃え始めた、それはかなり唐突だった。


「山という地形が『魔物の類い』ならこっちだってやり方を変えざるを得ないんだぜ?」


赤くカラーリングされた左手の拳銃から大量の火の玉が発射されていき、山を燃やした。


「ヒェヒェーーー!放火!放火じゃないですか!?自然への冒涜じゃないですか!?」


「知ったことかよ」


そして、山は山なのに火の海になっていく。


「さて、狩るか………」


ガンマンは燃える山で山狩りを始めた。


「ヒェエエエエ!ダズゲデ!ダズゲデ!?」


『魔虫』使いの魔導師、蛇蝎丸邪連は助けを誰に求めるか知らんが上げ続けながら、逃げる、逃げて、逃げて、逃げて、逃げまくる。


「ヒェーヒェー………助けて助けてくれ」


ガンマンはあらゆる虫の塊が人の塊をしたのが火の海に中にいるのを発見した、それが『魔虫』使いの魔導師、蛇蝎丸邪連なのだろう、ガンマンはそれを見て、赤くカラーリングされた左手の拳銃から火の玉を発射した。


「ヒェ、ヒェエエエ!ジニダクナイヨォ!」


「俺様の名前を冥土の土産に教えてやろうか、『鵺殺しの鵺』、鬼神ヶ浦瀬徒きしんがうらぜっとだ、しっかり俺という人間様の恐怖を覚えとけ」



その宣告後、『魔虫』使いの魔導師、蛇蝎丸邪連は火だるまのまま、そのまま死亡する。

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