先輩へ
なんで俺を置いていった!?
なんでだよ!!
意味がわからない、この世界にきてからもそれなりに仲良くやってたよな!?
昨日だって!!
昨日のデートなんて実質子作りみたいなもんだ!!
なのに!!
意味がわからない……
〈手紙を呼んでみたらどうだ?〉
そうだ、手紙だ、とにかく何が書いてあるか読むしかない。
俺は焦りながらも手紙を開いた
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先輩へ
突然いなくなってすいません。
昨日の朝、騎士団のシュナウザーさんから連絡がありました。
どうやら魔術師団体を襲っているヤツらの拠点が判明したようです。
加護持ちの人達への協力要請が入りましたので行ってきたいと思います。
先輩を一人で置いていくのは心配ですが、元の世界への戻り方含め探してきたいと思います。
時間はかかるかもしれませんが、ちゃんと待っててくださいね。
本当は私一人で行こうと思っていたのですが、ナルシーさんは目的の相手ですし戦士として戦えます。
クローディアちゃんは魔術が使えます。
中級魔術ではヤツらには通用しないようですが、風属性の得意なクローディアさんには王国の魔術師が支援系魔術を教えてくれるようです。
先輩はまた怪我をすると思います。
先輩は戦闘より、戦闘じゃない仕事のほうが絶対に向いてます。
ギルドには戦闘じゃない仕事も多いです。
賢い先輩ならきっとどんな仕事をしてもうまくやれると信じてます。
シュナウザーさんには先輩はパーティ「クローディア・ボトルフィット(仮)」から抜けていると話しますから来てもだめですよ。
それにすぐに出ちゃいますから、追ってきてもだめですよ。
それにしても変なパーティー名になっちゃいましたよね(笑)
先輩、帰ってきたらまたデートに行きましょうね。
約束ですよ!
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はぁ!?
騎士団から連絡!? 昨日の朝のアレか!?
よつばめ、なんでもないとか言ってたよな!?
怪我するから置いていくだと?
治療魔術が使えるお前がいなかったら満足に怪我もできないだろうが!
これから先冒険者以外の仕事で食いつないで王都で待てってか!?
ふざけやがって!
さっそく部屋に戻り旅支度をする。
目指すは城の軍舎だ。
ココを小脇に抱えて走り出す。
俺は城の門まで走るとさっそく兵士に声を掛ける。
「加護持ちのパーティー「クローディア・ボトルフィット(仮)」のメンバーの陽介ですが、よつば達はどこに向かったんですか?」
兵士達は突然の俺のセリフに多少驚いた顔をするものの、丁寧に対応する。
「その犬、あなたが陽介さんですね。よつばさんから行先は教えないで欲しいと言われております。すいませんがお答えできません」
「いいですよ!言っていいですから!あいつの上司ですよ俺!!」
「すいません、言ったら追ってくるから駄目だと、きつく言われてますので」
食い下がったが話にならない。
同じ返答を繰り返すだけだし、兵士もすまなそうにしているのがわかる。
なんか悪い気がしてしまうじゃないか。
〈小心者だな〉
わかってるわ!!
てかオセ!? お前よつば達が部屋を出て行った事気づいてた!?
〈もちろんだ〉
言えや!!
〈何をするかなんぞ知らぬ〉
くそ!
「ココ!!お前も気づいてた!?」
なんとなく攻められている空気を察したのだろう。
尻尾が下がって申し訳なさそうな顔をしている。
〈犬に当たるか〉
あああー!! もう!!
とりあえずたくさん撫でて怒ってないことをアピールしてやると尻尾を振りだすココ。
かわいいが、こいつと二人で仕事できるか!?
これからどうする!?
おとなしく待つか!?
後輩のよつばに元の世界までの帰りかたまで探させて俺は何もしない!?
さすがに俺にもプライドがある。
あいつより先に探して童貞も卒業してやるからな!!
そう考えるとなんとなく活力も出てきた。
〈お前は『身体変化』に加えて吾輩という神格まで使えるのだ。自信を持て〉
よし、いい事いうなオセ!
やはりこの世界で生きていく、元の世界に帰る方法を探すのならば戦闘能力は必要だよな。
さっそく冒険者ギルドに行ってパーティ募集を探してみよう。
俺は来た道を戻り冒険者ギルドへ向かった。
王都の冒険者ギルドはどの時間に行っても人がたくさんいる。
改めて見るとギルド内は広い。
食事をする場所から依頼ボード、パーティ募集ボードに素材買取ボード、様々な用途に合わせた掲示板が揃っている。
俺はさっそくパーティ募集ボードにかじりつき募集内容を見る。
中でも人気ナンバー1は『治療魔術を使える人募集!』だ。
圧倒的に多いな。
次いで『魔術系ジョブ』が多い。
ちらほらと『戦士』や『スカウト』『弓術士』等、前衛職や後衛職もあるが……
『指導者』募集はない!!
〈まぁないだろうな。『指導者』は戦闘向きではない〉
分かってるよ!!
Eランク冒険者のパーティ募集を見ると、ジョブ無しでも募集しているのがある。
ここから探していくか。
そもそも、俺はなんだ?
槍使い?
槍使いとして前衛職でパーティに入れてもらうのが良さそうだよな。
その後Eランクのパーティ募集をしている連中に会ってみたが、俺の装備の貧弱さ、そして犬連れを見られると渋い顔をされ、さらには『指導者』のジョブを見て何度かお断りされた。
なんでだよ!?
ジョブ無しより評価低いのか!?
〈まぁ、普通に考えて『指導者』のジョブに就いているということは、冒険者なのに他に就けるものがなかった、とみなされるだろうな〉
そういう事かよ……
ジョブ無いほうがパーティー入れたんじゃないか?
〈ありえる〉
これ詰んでないか?
諦めずにパーティー募集依頼を舐めるように見る。
魔術師、魔術師、前衛、治療、治療、治療、治療、前衛、魔術師、治療、スカウト……
だめだ!!
〈おい、吾輩の存在を忘れてないか?〉
ん? どういう事?
〈お前の名付けたオセレーダーがあるだろう。スカウト共の『索敵』スキルよりも高性能な『索敵』だぞ〉
そうか!! スカウトとして仕事すればいいのか。
さっそく『スカウト』に絞って募集依頼を見ていく。
するとけっこう募集はあり、その内の一つで『索敵』能力持ちを急募しているものがあった。
募集内容は
『索敵』スキル持ちの方急募
冒険者ランク なんでも可
アットホームで家族のようなパーティーです。やる気がある方大歓迎。
初心者の方でもメンバーが親切丁寧に教えます。
もうなんだろうな、ブラック企業の求人広告並みの地雷臭しかしないが、初心者歓迎で冒険者ランクも問わない、『索敵』スキルはあるし、これでいいだろう。
選べる立場でもない。
運が良いことにギルドの受付嬢に募集を見た話しをすると、丁度メンバーがギルド内にいるとの事だったのでテーブルを案内される。
テーブルには男1、女2の三人が腰掛けていた。
「レジーナさん、パーティー募集をみた陽介さんです。あとはよろしくお願いします」
そういうと受付嬢はさっさと持ち場に戻っていく。
何度か断られているからな、俺。
受付嬢も大変だ。
お尻を揉んであげたい。
レジーナと呼ばれた女性は俺のことをジロジロみると声を掛けてくれた
「よろしく、陽介っていうんだね。珍しい名前だね。私はレジーナで『戦士』だよ。そっちの二人は『斧術士』のアルバートと『治療術師』のローラだよ」
レジーナは戦士らしい冒険者の恰好をしている。
黒い髪はショートに、瞳の色は黄色に輝いており猫のようだし、見た目も猫っぽい。
革製のバストだけを覆うタイプの上半身鎧で大きな胸が溢れそうだ、下半身も同じタイプだが可動域を広くするために覆う部分は少ない。鎧の下には黒いタイツのようなものを着ておりおへそがぺろぺろできない。
残念。
動きやすさを重視しているようだ。
腰からは細見の剣とショートソードを下げている。
治療術師のローラは日に焼けた肌をしており金髪に黒色の眼をしている。
セミロングの髪をストレートに降ろし、清楚そうだし、胸も清楚な大きさだ。
膝上くらいまでの新緑のような緑のローブに長い杖、ローブの中にはレザーアーマーを着ており後衛でもある程度の防御力はありそうだ。
俺よりはあるな。
斧術士のアルバートは男。
以上。
男に興味はないが、盾役なのだろうか、レジーナよりはしっかりとした鉄製の鎧を着ており腰からは斧を二振り下げている。
茶色の髪は短く刈られており、ベリーショートって感じだ。
がっしりとしており、ちょっと熊っぽいな。
全員俺と同世代くらいか、ちょっと若いくらいに感じる。
お互いにお互いを観察する時間が終わり挨拶を返す。
「陽介っていいます。ジョブは『指導者』ですが、『索敵』の能力はスカウトよりも正確です」
『索敵』がスカウトよりも正確と聞いて驚くレジーナ達。
「『指導者』で『索敵』持ちとは珍しいね。冒険者カード見せてもらう事ってできるかな?」
どうしよう!?見せたら引かれないか?
そもそも『索敵』スキルも記載されてないし……
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