「マイ枕」に行き着くまで。

私の人生で多少袖振り合った方々も、いつ出会った人か、どういうシチュエーションでのおつきあいであった人か、私のどういう一面をお見せすることが多かった人か、などなどの違いで、私という人間をどう思っているか、けっこう評価が分かれると信じている。そう思いたい。

多くの方は、ずぼらでガサツでおっちょこちょいで、面倒くさがりで横着で、ワガママで思い込みの激しい面倒なヤツだと思っているかもしれないけれど、しっかり者だと勘違いしてくれてる人もいる。ということは、少しは、私のことを「(大胆なところもあるけど)実は繊細な人」とか思ってくれてる人もいるはず。


だって私、ですから!


というわけで、一番困るのが旅行だ。

私の旅行は、怒濤の超詰め込みハードスケジュール、下手すると分刻みの局面もあるので、とても体力と気力を使う。それなのに、旅先では朝の4時5時くらいまで眠れなかったりすることがよくある。

しかも、すでに散々歩き回ってすごく疲れている日であっても、岩盤で眠れないのだ。


たいていの宿は、とにかく枕がデカくて高くて硬い。

一方、私の愛用枕は、小さめで低くて柔らかめ。眠れるわけがない。


子供のころから愛用していた枕が、さすがに大人になってしばらくしてだいぶヘタレたので買い替えようと、当時流行っていたテンピュールを試したことがあった。いいお値段だったけど、背に腹はかえられない。


ところが、相当鳴り物入りだったのに、ダメだった。

後頭部から首から肩周りから全部を包み込むようにフィットしてくる低反発ぶりが鬱陶しくてシックリ来ない。

そして、「枕が選べます!」的なホテルでも、低いのを選ぼうとするとこの手のものが多い。


なので苦肉の策で、ホテルの部屋のバスタオル2枚をちょうどいい高さに積んで寝ることになる。

でも、これだと、高さはよくても小さ過ぎる。それになんと言っても、硬い。結局は、眠れたとしても夜中に何度も目が覚めるし、しまいには枕をはずしてしまっていることも多い。


どんな枕が理想か。

実は、こんなトシになっても、いまだ理想の枕は見つかっていない。こうしてあらためて書いてみると、本当にビックリするし、不幸なことだ。

子供のころの綿の枕を変える時、テンピュールがダメだったあとは羽枕にした。でも高さがあり過ぎたので、ほどいて中身を減らした。そうやってしのいで使っていたけど、欠点があって、羽が出てきてだんだん中身の量が減ってくるし、寝てる途中でペチャンコになるのがイヤだった。

何とか慣れて眠ってはいたけど、寝ても肩こりが取れなかったり、寝るとかえって肩こりがひどくなったりするのは、そのせいかもしれないと長年思っていた。


そして、結婚後。

夫のM夫くんが枕を買い替える機会があった。久しぶりに枕売り場に行くと昔より種類が多くて、私もちょっと変えてみようかと思い立った。


結果、やはり完璧な理想の枕とは言えないまでも、今は、スポンジみたいなのを細切れにした物を詰めた枕に落ち着いている。ただし、やはりほどいて中身の量を半分くらいに減らしている。


それで…である。

詰め物が細かくて、いったん側生地をほどくと縫い直したところから小さい中身が出てきたりして扱いが煩わしいので、100円ショップで買った洗濯ネットに詰めてから枕の側生地の中に戻した。

残りの中身も、捨てるのもナンなので、やはり洗濯ネットに詰めて置いておいた。


そこで、ハタとひらめいたわけです。

このネット詰めの残りの部分をマイ枕として旅行に持っていったらどうか!?

幸い、軽くて、ネットを折らずに広げると中身も薄っぺらくなる。


満を持して、これを初めて旅行に持っていく日。

数泊する予定だったので、さすがに枕までカバンに入るかなぁと、ワクワクしながらも心配で、荷造りする時はそのことばかり気になっていた。


でも、やってみたら、チャックも難なく余裕で閉まって、やった〜♪

これで夜もバッチリだ!!


そして、悠然と現地に着いてみたら、カバンの中には数泊分の着替え一式がまったく、ただの一枚も入っていなかったのだ。。。


夫のM夫くんもビックリ。

そりゃ、チャック余裕で閉まるはずだわ。。。


着替えはちゃんと用意していたのに、その束が目に入らなかったらしい。もはや枕のことで頭がいっぱいで。


空港のユニクロに飛び込んで、ムダな出費。

でも、そこまでして持っていったマイ枕は、ホテルのバスタオル1枚と組み合わせると絶妙にいい感じで、夜はぐっすり眠れましたわ。


という紆余曲折を経て、最近の旅行は「マイ枕持参」で励んでおります。

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