無情な非科学

人外生物の闇

第0話 プロローグ

 僕、羽吹 想はぶき そうが生きるこの世界には、魔法のような不思議な力や、科学的な証明が不可能な出来事の存在を認識できる。表にならない部分で、日常のように動いているらしい。僕はそれを話に聞いただけなので、やはり空想の世界の話のように聞こえてしまう。身近に実感しない限りこの考えは変わらないだろう。確実な根拠や経験が無いと、どうにも信じられないのだ。昔からずっと、科学的な証明ができない現象や存在は到底信用できるものでは無いし、これからもそうだ。超能力者に取材したとか超常現象を映像や画像に記録できたとかをテレビや新聞などのメディアで不定期に見ることがあるが、どの情報も証明ができていなかったり根拠がはっきりしていなかったりで僕の信用を得るまでには至らない。そんなことが実在するのなら、是非とも僕の目の前で披露していただきたいものだ。

 そんなことを思考しつつボケーっと歩いていたら、いつの間にそんなに時間が経ったのか、今日から通う高校に到着するようだ。我ながら初登校のこのタイミングで何故こんなにもしょうもないことを考えていたのかと少し自分の思考回路を疑う。

 くだらない思考をやめ気持ちを切り替えようと、一度立ち止まって数回深い呼吸をした。もともと気が乱れていたわけではないが、少しだけ落ち着いたような気がする。春風の影響で微妙に不整になっていた制服を軽く整え、再び歩き出した。

 入学式を控えたたくさんの生徒たちと同じように、これから始まる高校生活への期待と不安を胸に、残りわずかな桜の花弁が散る校門をくぐった。



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