戦争と革命の時代・ソ連の崩壊

北風 嵐

第1話 序

ソ連の正式名称は『ソビエト社会主義共和国連邦』である。ソビエト(労兵協議会)はロシア革命の主体であった。ソ連の崩壊とは社会主義が上手く機能しなくて連邦が崩壊したことになる。

連邦は15の共和国より構成されている。最大の共和国はロシア共和国である。列強の干渉戦争終結後の1922年、ロシア、ザカフカース、ウクライナ、白ロシア(現在のベラルシー)各共和国を統合しソビエト連邦を形成し、その後拡大し15になった。またソ連は多民族国家で構成共和国内にも20の自治共和国が認められていた。


ローザ・ルクセンブルクは著書の中でこう書いている。

「極東に血が流れる。ツァー政府(ロシア)の犯罪的政策によって、ロシアと日本の間に戦争がひきおこされたのだ。二つの国のはたらく人民は、ツァーと日本資本主義の繁栄のために、互いに殺し合わねばならぬ。世界中のプロレタリアもブルジョワも、不安のまなざしで、戦争のなりゆきを追っている。これはロシアと日本だけの問題ではないのだ。世界資本主義の運命とツァー方式の絶対主義の運命がかかっているのである」


二つの国の戦争とは日露戦争(1904年・明治37年)のことである。

「現在の世界の情勢の中では、二つの国の間のどんな戦争でも、利害をことにする全ての列強の武力衝突に転化し、全面的な流血を引き起こす危険がある・・資本主義の野望の特別の対象となったのは、特に巨大な自然の資源と5億の住民を持つアジアであり、アジアの中でもとりわけ中国であった」

 ツァー政府が日本と戦っているのは、中国を手に入れるためであると断言し、この戦争はおそかれはやかれ、資本主義世界全体を渦中に巻き込む危険があると、ローザはすでに来るべき世界戦争を予見していたのである。


日本を「国力と生命力に充ちた国、すでに多くを学び取り、近代的な十分に武装された軍隊を持ち、この武力を十分に使いこなせる国である」とし、「たとい、どのような結果になろうとも、この戦争は必ずツァーリズムの埋葬に行きつく」とロシアの敗北とよって来る革命を予測する。そして、ロシアにおける革命は必ず、ロシアより資本主義が発達しているが、やはり皇帝の絶対主義の尻尾を持つドイツに革命的な状況を作り出すであろうと…ドイツ社会民主党の最左翼(スパルタクス団)に属する彼女は、その時のドイツと自身はどう決断し、行動を取るべきかを問う。

プロレタリアートの革命的な連帯によってしか世界戦争は防げないと、彼女は言う。


彼女のいう「資本主義の野望」と「世界戦争」はレーニンの『帝国主義論』に理論化される。日露戦争で弱体化したツァリーは、1917年第1次世界大戦の最中倒され、ロシア革命が起きる。革命の主体は、ドイツとの過酷な戦争に疲れた「パンを求める」労働者、「平和を求める」兵士、「土地を求める」農民たちが結集したソビエト(労兵協議会)であった。そのソビエトを権力基盤にして革命を成功に導いたのがレーニン率いるボルシェビキ(共産党)であった。

ソビエトとはどのようなものであったろうか?革命期においては、例えば工場や兵舎で1000名を単位として代議員を選び、代議員大会で中央執行委員を選ぶ。3ヶ月単位や問題がある度に選び直される(女性にも選挙権はあった)リコールも可能な直接民主主義であった。ロシア革命では首都ペトログラードのソビエト、モスクワのソビエトが革命を担った。


革命後は村や市から州・地方・各共和国の各段階に設けられ、頂点に全連邦の最高会議があった。この最高会議が国会にあたる最高権力機関であった。しかし革命後は代議員に立候補できるのは共産党員か党から指名された者に限られたので、ソ連国家の決定権はソ連共産党中央委員会(書記局・政治局)が掌握しており、最高会議はその追認機関と化し形骸化していった。


簡単に革命後のソ連の足跡を辿ってみよう。

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