第15話「女子トークwithドラゴン」

「前世かぁ……。それが、私が招かれたことと関係があるの?」

『うーん……関係はあるかもしれないし、ないかもしれないね。だけど……大事なことだったんじゃないのかな、君の、魂にとっては』


 黒曜石のような瞳が、キラキラと輝く。

 確かに、私の前世にとっては……そうだと思う。

 ……だけど……私は、私だ。

 今更そんなことを言われても困ってしまう。


 ……アリシアわたしは割り切った。

 前を向いて、思う存分生き抜いた。

 後悔なんてないし、今更振り返りたくもない。


『本当に?』


 権之助さんは、見透かすように問う。


『本当は、アンリくんのことはツラいから忘れたいけど完全には割り切れてなくて、それはそうとしてティートくんはカッコイイし推せるなぁとか思ってたりしない?』

「すみません、後半は言う必要ありました?」


 そうだね、俳優だったら余裕で写真集集めてたし出演作追ってたよ。間違いないよ。

 ドラマの主演よりは悪役ヒールとか……あれ?ㅤ脳内映像でナチュラルにアマンダさんが隣に入ってきたのはどうしてだろう。


『まあ、何を選択するかは君次第だけどね』


 どこか声を弾ませて……そしてしっぽを弾ませて、権之助さんは語る。

 おちゃめな神様だなぁ……。


「はいはーい!ㅤあたしはティートさんに1票!」

「ええとぉ~、霧島さんが素敵だと思います~」


 扉から、巫女ズがひょこっと顔を覗かせる。ずいずいと身を乗り出す奈津さんと、照れながら控えめに覗く茜莉さん。

 恋バナかな?


「前世の恋って素敵だね!」

「ほんとに~今すぐ転生したくなっちゃいます~」


 茜利さん、そっちなんだ……?


『まあ、しばらくゆっくりして行きなよ。お茶ぐらいなら出すし……』

「……ヨモツヘグイとか大丈夫なんですか?」


 ほら、冥界でご飯食べたら帰れなくなるって、鉄板ネタだし。確認しとかないと。


『変なところで詳しいね……。大丈夫だよ、ここ現世だもん。死体が動いてるだけで』


 白いしっぽがぴょこぴょこ跳ねる。

 死体が動いてるのは、「だけ」で済むの……?


「もうちょっと気楽になって大丈夫だよ!ㅤあたしもバイトに来てるだけだし!」

「そうですよ~敗者の街とは違うんですよ~」


 顔を出したまま、巫女ズも話に入ってくる。

 茜莉さん、敗者の街ってどこの話?ㅤすご不穏な名前の街なんですけど???


「アマンダさんも、ライター鳴らしたら異世界に行けそうな気がするってたまに言ってるし!ㅤもっとテキトーになろ~☆」


 奈津さん、ちょっと待って。それはどんな異世界なの!?


「それでそれで!ㅤフィリップさんは、黒棺を唱えると天に立った気持ちになれるんだって☆」


 黒棺版権ネタはもういいから!!!!

 心の中でツッコミが追いつかなくなってきた……と、思ったら、茜莉さんがお茶とお団子を持ってきてくれました。


 コンビニの袋に入ってましたが、美味しかったです。まる。

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