大回転寿司店

@stdnt

第1話

回転寿司は楽しい。

だがその難点は、風をきってすすむネタが乾きやすいことである。

そしてとある海辺の町には、ネタが乾かないように工夫している店があった。


寿司でもつまもうか。昼時になって、その店に入った。

海に面した入口には暖簾がかかっていて、磯風で揺れている。


中に入ると、フロアはほぼ円形。

中央に職人がいて、握ったネタをベルトにおいている。

回転寿司といっても、割と高級なレベルの店だ。

窓には高そうな柄の和紙が貼られていた。

海が見えないのは残念だが、日光を遮ることで、ネタの乾きを防いでいるのかもしれない。


お茶をくんで、一口のみ、ガリで胃袋を刺激する。

空腹が急激に自覚され始めた。

醤油をついで、まずはカッパ巻から。

可もなく不可もなく。だが、うまい。

お次はさんま。ひかりものは大好きだ。しょうがとネギを落とさないようにして味わう。

うん。うまい。


うにがやってきた。しめしめ、誰にも取られなさそうだ。

手を伸ばしかけたその時、ベルトが止まった。

同時に入口の自動ドアがあき、客が入ってきた。


気まずくなって手を引っ込めかけたが、ベルトが再び動き出したので助かった。

うに奪還。うにうまし。


マグロ、コハダ、タコ、アナゴと続く。いずれも新鮮でうまい。

ネタは全然乾いていない。


お茶で口の中をさっぱりさせて、ガリで刺激して、お次、カンパチ、いきましょう。

手を伸ばして、また、ベルトが止まる。

自動ドアが開いて、また、お客だ。

なんだかベルトと自動ドアの制御がリンクしてるみたいだ。

システムエラーかな。


ベルトが再開したのでカンパチを。

良質の脂がとろけるようだ。

これならいくらでもいけるなあ。


結局ひとりで20貫も食べてしまった。

しかし満足だ。

お茶を飲みほして、お冷をいただいて、お会計。

今日のお昼は十分に満たされた。


お腹をさすりつつ、入ってきた入口から外にでると、

見えるはずの海がない。

海のかわりにみえるのは海と反対側の山々だ。


この時、この店のネタが乾かない訳が分かった。

回転していたのは、ネタじゃなかったのか・・・


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