第四夜 話し合いのその後の……
「輝夜殿、もう一度謝罪させて頂こう。愚息が、本当に申し訳なかった…!これはひとえに私の教育不足だ」
「謝罪は、受け取らせて頂きますわ。ですが、処分の後は彼を我が国に連行させて頂きたいと思いますの。我が国の方で、正当に、裁きたいのです」
苦渋に顔を歪ませ、国王が考え込む。甘い考えは通さないわよ?
「…承った。アリア嬢、貴女にも賠償金を払おう。長らく愚息が迷惑を掛けた」
英断ね。アリアちゃんは優しいから許してしまえるようだけれど、わたくしは許せないもの。そんな事で水に流そうだなんて、ね?
「いえ…陛下そんな勿体無い…。為になる事は多かったですもの…」
「しかしな…」
頭を悩ませている国王に、玲様が口を開いた。何かいい案でもおありなのかしら?わたくしは思いつかないのだけれど…。
「では、妥協案としてアリアに我が国へ渡航する許可を頂けませんか?この子の才は素晴らしい。最新の情報を学ぶには我が国に来るのが効率的だと思うのですが」
「…!その程度でいいのか!?」
喜色満面と言った様子の国王に、期待に目を輝かせるアリアちゃん。ただ、アリアちゃんはんんっ、と咳払いした後、至極真面目な顔に戻った。
「わたくしはそちらのほうが嬉しゅうございますが…」
…なるほど、アリアちゃんには向こうに想い人がいたものね。それと、留学でも遊学でもないのだから、あちらに留まって囲い込まれたとしても文句は言えない…。玲様はうまい手を考えたものだわ…。流石わたくしの旦那様!国王は思惑に気付くはずもなく、書類にサインする。……どこからでてきたのかしら。
「あぁ!それくらいなら直ぐにでも許可を出そうっ!」
話が一段落してドルチェをいただいていると、扉の前が俄かに騒々しくなってきた。どなたかいらっしゃったのかしら…?ここは王族用の応接室、の筈よね?
「―――なさいよっ!あたしは王子達の想い人、ヒロインなのよっ!?そこにあのバグがいるんだから!」
「ここは王族用の応接室だ。如何様な用とあれ、通す事は出来ない」
この甲高い声…、阿呆さん?応対しているのは衛兵の様だけれど、押し切られるのも時間の問題ね…。バグって何の事かしら…?それにしても表と裏の違いが激しいわねぇ。まぁ、猫かぶりにもあらがありましたけれど。するとまた新たな声が。
「おい!ここに父上もいるのだろう?ならば通せ。私がいるからにはもう大丈夫だぞ、シャロル」
「殿下っ!私を放ってどこ行ってたんですかぁ?シャロルぅ、寂しかったですぅ」
随分な変わり身です事…。それになんて甘ったるい…。どうして彼女のような狐に騙されるのかしら?
「すまない。弟が立太子する私をどう言う訳か見下し、詰って来たのでな。懇切丁寧に説明してきたのだ」
「殿下ご立派なのねぇ!シャロル、惚れ直しちゃいましたっ!」
「お、そうかぁ?」
…まさか、二人とも分かっていないのかしら?思い込みもここまでくればある種の才能ね。でも、これは忠告を無視したという事だし…。お仕置きは必要、よね?甘ったれていられるのはどうやらここまでみたいよ?
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