にこぐるま

しゅりぐるま

眩しい月

病院に忍び込んだ僕と、ベッドの上で踊る君。

今この瞬間、世界には僕たちしかいないのではと錯覚するほどの静けさの中に、僕らはいた。


乱れた呼吸を隠して踊る君の中に、美しい生命の源を見た僕は、その眩さに思わず俯いた。

俯き、崩れ落ち、ひれ伏した。


「別れましょう」


上から言葉が降ってきた。


「あなたに私は支えられない。今までどうもありがとう」


有無を言わせない君の意思。

脆い僕は顔を上げることもできなくて、パジャマの裾から見える、君の痩せ細った足首を、しばらく真っ直ぐ見据えていた。


そのまま俯き逃げるように出て行く僕。

ただ一度振り返ると、君は優しい微笑みで僕を見ていた。

儚く、美しい、全ての生命の母のような微笑み。


その微笑みを胸に刻み、僕は走り去った。


これが、忘れられない君との最期。

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