一休さん(ちゃんとした版)

ちびまるフォイ

( )を入れなかった版

京都のとある町で元気な男の子が生まれました。


男の子の名前は「千菊丸」と名付けられ、

6歳になると安国寺というお寺にいくことになりました。


そこで両親は千菊丸に言いました。


「今日からお前は千菊丸ではなく一休となのりなさい」


「わかりました」


一休さんはお寺に入ると他の子たちとの共同生活がはじまりました。


とはいえ、そこはお寺なのでけして豪華ではありません。


ある日の夜、一休さんは空腹をごまかすために水を飲もうと立ったとき、

和尚さんの部屋を通りかかりました。


「……ああ、甘くておいしい!」


「お師匠さん? なにを召し上がっているのですか? 水飴?」


「一休。これは……その、水飴ではないぞ。薬じゃ。

 大人はよいが子供には毒だから食べてはいけないぞ」


「わかりました」


次の日、和尚さんが不在のときに一休たちは部屋を掃除していると

うっかり部屋にあったツボを割ってしまいました。


「ああ、これは和尚さんが大切にしていたツボ!

 どうしよう、きっと怒ってしまうよ!」


「大丈夫、僕にまかせてください」


「一休……?」


「よいしょ、と。ほらここに和尚さんの水飴があります。

 これをみんなでなめましょう」


「本気かい? そんなことしたらますます怒られるよ」


「いいから任せてください」


一休の言葉に従った弟子たちは水飴をなめ始めました。


「ああ、甘くて美味しいね」

「うん、ほっぺたが落ちちゃいそうだ」


和尚さんが帰ってくると水飴をなめているお弟子さんたちを見つけました。


「お前たち、なにをしているんじゃ?」


「実は、和尚さんの大切なツボを割ってしまいました。

 そのお詫びのために、ここにあった毒の薬をみんなでなめて死んでお詫びしようと思ったのです。

 けれど、こうしていくら食べても死ぬことができないのです」


それを聞いた和尚さんはそれ以上怒ることができません。


「一休、お前はほんとうに頭が回るのう。

 わしの負けじゃ。水飴を好きなだけ食べるといい」


この一件もあり、和尚さんは一休さんに一目置くようになりました。


「これ一休。実は法事の依頼が来ていてな、お前もついてきなさい」


「わかりました」


和尚さんと寺の外に出た一休は立て札のある橋へやってきました。



【 このはし わたるべからず 】



「一休、どうやらこの橋は渡れないようじゃ。別の道を行こう」


「いいえ和尚さん、大丈夫ですよ。私のあとについてきてください」


「お、おい一休」


一休は堂々と橋を渡って向こう岸に行ってしまいました。

それを見ていた将軍は声をかけました。


「一休とやら、お前は立て札を読まなかったのか?」


「はい、もちろん読みました。

 ですから、はしっこを通らないで、真ん中を歩いてきました」


「ははは。なるほどな、橋ではなく端というわけか。

 これは一本取られたな」


将軍は大いに笑い、一休を金閣寺へと招待しました。


「一休よ、お前は頭が回るということがよくわかった。

 そこでだ。ひとつ頼みを聞いてくれるか」


「なんでしょう」


「そこの屏風があるだろう? そこに描かれている虎が

 毎晩抜け出てきてはいたずらするのだ。

 だから、虎をつかまえてしばってはくれないか?」


「わかりました。では虎をしばるための縄を用意してください」


「ふむ、縄か。ほら用意したぞ」


将軍は一休に縄を渡すと、どうするかを見守りました。

一休はあらあらしく縄を構えると将軍に言いました。


「将軍様、ではこれから虎を捕まえてみせます。

 屏風から虎を追い出してください。でないと縛ることはできません!」


「……!」


「将軍様、早くしてください。虎を絵から出してください!」


将軍は観念したとばかりに手をあげた。


「一休、私の負けだ。お前は本当に賢いな。褒美を取らそう」


「ありがとうございます」


やがて一休さんはお寺の住職となり、のちに一休禅師と呼ばれ

仏教の教えを広める偉いお坊さんになりました。



めでたしめでたし

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