指かプライドか
本当に生意気な子供だったと思う。
一時期、本当に短い間だけ、成績がかなり良かった。授業なんか寝ているか、周りと騒いでいるクソガキが、試験は満点、低くても九十台、なんてことになれば、担任としては面白くないに違いない。それが私であった。何度か呼び出されたが、真面目に聞く気などなく、ヘラヘラしながら相槌を打っているか、呼び出し自体を無視していた。
ある日、授業中に準備室の様な場所に呼び出された。授業中に強制連行となれば逃げることも出来ず、しぶしぶ着いて行った。まあ、怒られるのだろうなと予想はしていたが、そこは私にもプライドがあり、いつものようにヘラヘラと笑いながら、突然の自習時間に湧く教室を後にした。
「お前を殺したい」
準備室に入るなり、担任はそう言った。
何を馬鹿な、と思ったが、担任は金槌を振り上げており、見たことも無いような眼をしていた。冗談ではない。一瞬で悟った。
「手のひらを机に置け」
もはや、一も二も無く従った。従わなければ金槌が飛んでくるかもしれないとか、そういう計算は出来なかった。プライドなんてものは、金槌が吹っ飛ばした。
「俺はお前が心底嫌いだ。お前を刺し殺してどっかに逃げたいぐらいに」
思考することも敵わなかった。ただ、目の前の凶器の金槌と、狂気の眼を交互に見るぐらいだ。やられる、そう思った。
ここから先は何と言われたか覚えていない。
教室に戻った私を、気遣う声は無かったことだけハッキリしている。
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