Log-161【勇者、異邦に降り立つ-壱】
大陸三国とはこれまた
そこに住まう町人もまた彩りを抑えつつ風合いを醸し出す長着を身に纏っており、鮮やかさときらびやかさを重視する大陸ではあまり見られない光景だった。とはいえ活気がないのではなく、過剰な着飾りを必要としない、飽くまでも自我のままに活き活きしているといった体裁だ。合理的と言えば合理的なのだが、その合理性はセプテムに蔓延していた堅苦しい息苦しいまでの効率化を図った仕組みなどではなく、むしろ重荷となってしまうような取り繕いを脱ぎ捨てた、その人ありのままを生きるのに最適化された洗練さを伺わせる。
そんな一風変わった国風を持つ
「ねえウルリカ、多分これがレギナさんの目指すセプテムなんだろうね」
「そうね、アウラとはまた別個の豊かさを感じるわ。文明水準は大陸の方とだいぶ離れてるけど、一々そんなものに依存する必要がないくらい、優れた教養が民衆に浸透してる。恐らく、文化水準が高い影響なんでしょうね」
目に見える限りでは、蒸気機関や電気機関といった先端技術は見当たらない。その分、初歩的なものではあれど、町人のほとんどが魔術を利用した作業風景が見て取れる。
大陸三国の中でも文化大国で知られるアウラですら魔術を扱えぬ者は数知れず。基本的には識字率に比例して魔術使いも増えると言われるが、見渡す限りの町人が魔術を行使している光景を見られるのは、世界広しといえど
ふと、ウルリカの目に留まる、見覚えのある人影があった。
「……うそ。あれって、もしかして……」
「――ハプスブルク?」
「やあ、奇遇だねウルリカ嬢。君たちも
「冗談はよしてハプスブルク。あんたの用事はあたし達でしょ? さっさと説明なさい」
ウルリカの性急さにほくそ笑むハプスブルク。対して隣の男は表情一つ変えず、
「評判通りの勇者のようですね。私の名はソウセン・ツキシロ、母なる国
自らをツキシロと名乗った。大陸ではあまり聞き慣れない姓名は、やはり異国風を思わせる。そして、
「巫女王……シャーマニズムを基盤とした国家体制、そういうのは古くの集団統制と認識してるわ。いわゆる、魔術という奇跡の所業を特権階級のみが掌握して、民衆に権威として振るう権力構造。……でも、町民達の生活風景を見る限り、そういうものでもなさそうね」
「はい。
「なるほどね、つまりアウラの政治とそう変わんないわけか。王が武力かまじないのどちらに由来するか、ってだけで。私達が頼みとする
どこか腑に落ちた顔のウルリカとは対照的に、アクセルとエレインは呆然としてしまっていた。ツキシロは無礼とも取られかねない彼女の言葉に、性根の誠実さを感じ取ったようで、心なしか穏やかな表情を湛えている。対してハプスブルクは、
「ふふ、まあ堅苦しい話しはこの辺にしようか。私達の目的は君達勇者一行の召喚だよ、巫女王の御前までのね」
飽くまで
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