Log-152【海の只中に至るまで-弐】
(エフセイ……ボブロフ……?)
エレインは結局一度も顔を合わせる機会のなかった相手だったが、彼であれば
(ただの御者として生かされた、なんてことはないはずだ。多分、秘密裏に何かしらの任を命じられていた、って考える方が自然だよね)
ふと、エレインは不思議に思う。この人魔大戦において、ここまで滞りなくセプテムの軍隊を配備し、その兵站までを指揮できたのはなぜか。開戦と同時に市民を疎開させ、軍需物資製造へと迅速に取りかかれたのはなぜか。それは少なくともこの国を、その民を知る者にしか成せない所業。そして、どのような事態であれ、合理的かつ瞬時に判断を下せる者にしか成せない
全ては臆測に過ぎず、今後も決して公にされることはないだろう功労。しかしそれは、本来誰に捧げられるものだったのか、恐らくは……。
(……まあ、僕が考えても仕方ないか。あんまり関係ないし。……でも、仮にも一時代の玉座に居座った人物だ。執政のやり方は悪かったかも知れないけれど、グラティアのマース様やアウラのヴァイロン王と肩を並べて国家の運営をしていたんだ。生半可な知識や洞察で国の指揮を執れるわけでもなし。しかも、レギナさんがわざわざ生かして手中に置こうと考えたくらいだ。だから、元軍人の彼が戦時のこの国に貢献してくれているって考えれば――ううん、ボブロフだけじゃない、みんながそうだ。誰も彼もが一角の人物なんだ。みんながいれば、セプテムはきっとこの戦いを切り抜けられるはずだよ)
エレインにはこの国が沈まぬ確信があった、ウルリカがそうであったように。
革命を指揮してセプテムの新たなる王に即位したレギナを筆頭とし、アウラの
多大な損傷と多くの犠牲があった。同時に、決して砕けぬ大器と決意があった。ならば、膝を屈する理由がどこにあるか。
(二人とも、僕達はまだ死ぬわけにはいかないんだ。果たさなくちゃいけない使命が残ってるんだ。みんながここを守り抜く、だから僕達が打ち倒さなきゃいけない――神様を)
エレインらが目指す
「……人の、声がする」
馬車の外から市民の賑やかな声が聞こえてきた。セプテム城郭都市の東側に設けた疎開地に到着したようだ。西側では人の気配が失われ、
「みんな、凄い元気だ……一致団結してるって感じだ……」
人々はみな力を合わせ、額に汗して、元気を絶やさず、労働に勤しんでいた。見たところ疎開地はすでにシステム化されており、高度に効率的な工業地帯の体を成していた。都市の中心部から遠ざかっていくにつれて、こぢんまり区画された麦畑や牛舎、果樹園が現れる。そのような一次産業と二次産業とを明確に区分して配置し、外郭から中心部に向かって物資を吸い上げていき、再分配を容易にするシステムだ。全ては合理的な配列――ボブロフの手掛けた都市開発の
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